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ミゲルの戦争のmingoのレビュー・感想・評価

ミゲルの戦争(2021年製作の映画)
4.0
ミゲルと名乗るレバノン出身のゲイの男。幼少期の暗い記憶や内戦で負った心の傷を抱える複雑な心理をコラージュやアニメーション、演劇など多様なアプローチで4つのパート(ミシェル、ミゲル、バルセロナ、愛)で玉ねぎの皮を捲るように紐解いていく。人生最大の目標は自分を忘れ(ミシェルジェレイラティを葬り去る)、レバノン人ではなくスペイン人になることだった。幼少期はとろくてグズと呼ばれ、聴きながら泣けるようにベートーベンを編集でループにし、食事デートなどは無駄なので出会い系サイトで出会った男千人と寝るミゲルの本当の愛とは。50歳すぎて人を愛したことが無いと涙を流すミゲルは人生戻れるとしたら17歳に戻りたいと嘆く。戦争ですべてが崩壊したと話していたが、ジーエの難民キャンプで強姦して虐殺した男の話を聞いたミゲルはトラウマを抱え、初体験の男と言ったり思い込みだったり精神が分裂していくのが顕著に表れていた。その話を聞きながらイったと言ったときの哀しい顔のミゲル。それからミゲルの夢は精液まみれのパレスチナ娘になること。この世で最も下劣な男に身体が疼き、卑屈な劣等感が優越感にすり替わり、一切の罪を被る神の気分になれたと語る。「人生はサッカーだ、多くのタマを狙え」というポルノ語録をつくり、アラブの歌ではなくオペラを歌い、マリアという子作りを試した女性が居ながらそれでも消えない自己破壊的傾向と破滅的な恋愛観。最後のパートでは唯一ミゲルが涙するシリアの乳母タクラに想いを馳せ、父親ジョゼフに最愛のトニをダブらせ、最後まで母親の愛を望んでいたミゲルは新しい何かに向かって地中海を泳いでいくのでもなく数々の冒涜を犯した大聖堂で清められるミゲルは心が洗い流された顔をしている。
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