うべどうろ

最初の54年間 ― 軍事占領の簡易マニュアルのうべどうろのレビュー・感想・評価

3.2
 良くも悪くも、教科書的なドキュメンタリーだったような気がする。文字通り「マニュアル」として、パレスチナ占領の歴史が辿られる。とてもよくわかったし、とてもよく勉強になったというのが一番の感想なのだけど、それだけに真新しさがないというか、これまでの記録の蓄積を長々と見せられたという感じもしてしまう。
 しかし、その長々と見せられることにも意味があると思う瞬間があった。この作品、最初は占領の始まりを「歴史」として描く。インタビューに答える人物の「記憶」を頼りに、その過程を丁寧に描いていくのだが、途中から、明確にはどこかというのは難しいのだけれど、いつの間にか「現在」の物語へと変遷していることに気がついた。軍事占領という武力行使が意味をなさなくなって、その命題として掲げられていたはずの“大いなる目的”も見失われ、両陣営が「日常」として紛争を営むようになる。それはただ、安全を脅かすという“消極的な目的”のためだけに銃を持ち街を壊すイスラエル兵の在り方でもあるし、発泡されようが気にせずゴミ箱の上に乗るパレスチナ人の子供たちの在り方でもあるのではないか。その「日常」が僕にはすごく恐ろしくなった。それはきっと、二時間という長尺で「飽き飽きしてきた」という感覚が、その「日常」の恐ろしくも破壊的な「飽き飽きしてきた」にリンクしたからではないか。僕は、その一点において、この作品を評価したいと思う。
 それが一つの映像として結実する瞬間がある。イスラエル兵が民家に押し入る記録映像の中、子供たちが布団から起き上がり、眠たそうな目を擦りながら写真に撮られているシーン。彼らの顔には「恐怖」がうつっているのだろうか、あるいは「いい加減にしてくれ」と訴えているのだろうか。僕はそれがわからなかった。わからなかったことこそが、この映画の醍醐味であって、この映画で伝えたいことなのではないかと僕には思われた。
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