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オアシス:ネブワース1996のsoのレビュー・感想・評価

オアシス:ネブワース1996(2021年製作の映画)
3.5
何故彼らの音楽をきくのか?
リバティーンズが再びロックの熱狂を世の中に呼び戻した20年前、ニュース番組か何かの取材でこう尋ねられたイギリスの平凡な少女が
「リバティーンズの音楽を聴いている間だけは、自分のクソみたいな人生が美しく思える」というように答えていたことが忘れられない。
本作、オアシスを生きがいに生きる男女25万人が集まった1996年ネブワースのライブドキュメンタリーを観て、この言葉が生々しく蘇ってきた。

リアムを神と言い放ち、歌詞のタトゥーを入れるのは当たり前。
人生最高のライブどころか、人生最良の日だったと回想する彼らの言葉。
今まで25万人という数字に驚くばかりであったが、その中の一人一人の深い思いに触れてみると、あの時彼らにとってオアシスがどれだけ大きな存在で、このライブがどれだけ特別だったかが伝わってくる。
死にものぐるいでチケットを手に入れ、会場へ向かうバスでは合唱し、メンバーの登場を今か今かと待ちわびる。その全ての行程が、彼ら全員を、あの空間全体をヒートアップさせる。
「スマホのない時代」だったことを何人かが強調するが、たしかに、ステージ上のメンバーが拳を振り上げる度にスマホのシャッター音が鳴り止まぬ現代には、全員が同じ思いを共有して生まれるような一体感・高揚感はもはや味わえないのかもしれない。

映画館は満員、観客は若者が多かった。
たとえば同じネブワースで演奏しているレジェンド、ツェッペリンやストーンズのライブ映画が当時から25年後に上映されたとしても、25歳年をとった古株のファンが押し寄せるだけだと思う。
いつまでも古くなることなく、怒り、悲しみ、くすぶり、行き場のない若者の心を揺す振り続けるオアシスの音楽はまさにロックであり、彼らはいつまでもロックスターだ。
時折、たとえばマスタープランの様な曲を歌うノエルの歌声に、純粋なものを聞く。不敵で、下品で、攻撃的な態度の奥で偶然に出会う無垢なものにハッとさせられる。そして、この無垢なものは、人間誰しもが持ってるものなのだと知らされる気がするのだ。
皆がそれぞれの聴き方・感じ方でオアシスを愛しているのだと思うけれど、この映画から改めて自分が感じたオアシスの魅力、そしてロックの魔法とはやはり「クソみたいな人生を美しく思わせてくれる」ことなのだ。

まさにイギリスの誇り、オアシス。

歴史になることを承知で白いセーターを着込んできたリアムに乾杯。
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