てっぺい

翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~のてっぺいのレビュー・感想・評価

3.5
【ディスる映画】
埼玉に限らず、滋賀や大阪の関西圏を徹底的にディスりまくり。2時間笑いっぱなしながら、出演陣の一貫した本気度、予想外なキャストを発見する意外性も。見終わると、本作が発する意外なメッセージに気づく。

◆トリビア
〇撮影は2021年8月にスタートしたが、GACKTの重度の発声障害による活動無期限休止を受け、撮影全体が一時中断となった。2022年10月の芸能活動再開に伴い、撮影が再開された。(https://ja.wikipedia.org/wiki/翔んで埼玉#実写映画)
○ GACKTは、関西人を敵に回しかねない本作の出演オファーを「リスクしかないので、やめましょう」と一度拒否。二階堂ふみに聞くと、やはり「やめましょう」と話していたという(笑)。(https://www.cinematoday.jp/news/N0140076)
○ 杏は自身初の男性役。大股で歩き、低い声のトーンなど、立ち振る舞いを意識して演じた。演じた後はしばらく低い声が治らず、桔梗魁の後遺症が残ったという(笑)。(https://www.cinematoday.jp/news/N0140076)
桔梗は原作にはないゼロから作るキャラクター。杏は、衣装にかつて近江の地を争った武将の家紋を入れる事を自ら提案、黒いズボンも実はレースの刺繍が施されていたりと、細かいところまでこだわりが込められていると語る。(https://www.cinematoday.jp/news/N0140076)
〇片岡愛之助・藤原紀香夫妻はこれが結婚後初共演となり、映画でも夫婦の役柄を演じる。(https://ja.wikipedia.org/wiki/翔んで埼玉#実写映画)
〇愛之助がGACKTの顔を舐めるシーンは台本に無く、GACKTからのその場での発案だった。(https://lp.p.pia.jp/article/news/295388/index.html)
○嘉祥寺の衣装は、池乃めだかの衣装を模したもの。(https://crea.bunshun.jp/articles/-/44678)
〇某有名映画を思わせるシーンは、権利会社から本当に許可が取れているのか、GACKTと杏は心配している笑。GACKTはむしろアウトだと思っている笑。(https://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1699865434)
○ 「琵琶湖の水、止めたろか!」は滋賀県民が大阪や京都に対抗する際に、捨てゼリフ的に使用する決まり文句として有名な一言。これにより滋賀のポジションは関東における埼玉と類似していると製作陣が判断し、本作のストーリーが作られた。(https://www.cinematoday.jp/news/N0140072)
○前作の撮影中、監督は二階堂ふみに「これは3作目までやるから」と伝えている。(https://www.fashion-press.net/news/111126)
〇ところざわサクラタウンで2024年1月まで開催される「翔んで埼玉展」では、劇中美術セットや小物、“池袋屋上”再現展示や、原作の原画展示に限定グッズ、“都会指数”がわかるクイズアトラクション「都会指数検定」体験も楽しめる。
〇埼玉県は、様々な形で本作とのコラボを実施。本作の出演者インタビューを掲載する県の情報誌や、「バーチャル埼玉」では、コラボイベントを開催する。(https://www.pref.saitama.lg.jp/a0314/tondesaitama/collabo.html)

◆概要
シリーズ第2弾。
【原作】
『パタリロ』魔夜峰央による同名コミック(1982年発表)※本作は完全オリジナルストーリー。
【脚本】
徳永友一(前作で日本アカデミー賞最優秀脚本賞受賞)
【監督】
「テルマエ・ロマエ」武内英樹(前作で日本アカデミー賞最優秀監督賞受賞)
【出演】
GACKT、二階堂ふみ、杏、片岡愛之助、堀田真由、くっきー!(野性爆弾)、高橋メアリージュン、津田篤宏(ダイアン)、天童よしみ、藤原紀香、川崎麻世、和久井映見、アキラ100%、朝日奈央、戸塚純貴、北村一輝、山本高広、川上千尋(NMB48)、くわばたりえ(クワバタオハラ)、坂下千里子、本多力、氏神一番(カブキロックス)
【公開】2023年11月23日
【上映時間】116分

◆ストーリー
東京都民から迫害を受けていた埼玉県人は、麻実麗率いる埼玉解放戦線の活躍によって自由と平和を手に入れた。麗は「日本埼玉化計画」を推し進め、埼玉県人の心をひとつにするため、越谷に海を作ることを計画。そのために必要な白浜の美しい砂を求めて和歌山へと向かう。そこで麗は、関西にもひどい地域格差や通行手形制度が存在しているのを目の当たりにする。そして大阪のめぐらせた陰謀が、やがて日本全土を巻き込む東西対決へと発展していく。


◆以下ネタバレ


◆ディスり
本作はなんと言ってもコレ。“虫がついている”と滋賀の文字面に麗のイジりが入り、滋賀解放戦線が劇中何度も悩まされる“ゲジゲジ”、“ハゲ散らかした”“大部分が滋賀なのに京都のものとされている”比叡山笑、人口より多いという“とび太”、そもそも滋賀の捨て台詞として有名だという“琵琶湖の水を止める”事を壮大にイジり倒す滋賀のディスりっぷり。大宮と浦和の対立をイジり、(最終的にはあったのだけど)埼玉にタワーがない事(信男が発した“そもそもタワーを建てたところで眺める景色もない”に爆笑)と、前作で出し尽くしたかに思えた埼玉ディスりもまだ顕在。なんなら“知名度ランキングU40s”が放り込まれた甲子園の牢獄には“群馬”や“山口”の名札もあり、とばっちりディスりを受ける県も笑。大阪へのディスりもふんだんで、甲子園を牢獄扱いする感覚はいささか不思議ながら、たこ焼きイジりをどんぐりとゆりあんで独特な世界観に昇華するあたりが拍手もの。そもそも粉モノを覚醒剤に重ねて表現する発想も素晴らしかったし、その症状で言葉がなまり、手がツッコミ出すよく見る表現もあれば笑、信男が麗に乳首ドリル笑、嘉祥寺のドリル寸止めに麗の“しないのか”が最高だった笑。

◆出演者
嘉祥寺がラリる麗の顔のソースを舐め上げ、胸をまさぐるのは台本になく、その場で2人で打ち合わせたという。片岡愛之助の怪演っぷりは嘉祥寺のキャラにどハマりで主役を食う勢い。敬愛する緒形拳の「自分でないものにはなれない」との言葉で演技への考え方が変わったというGACKTは、前作通りどのシーンをとっても彼自身から滲み出る造形の美しさがある。滋賀出身でないために方言やイントネーションに不安があったという杏も、彼女の美しいフォルムが麗のそれと2ショットで重なる美しさに、その抜擢理由の合点がいく。監督が“大河ドラマのつもりで演じてほしい”と演者に伝えたという本作は、圧倒的なバカバカしさの連続ながら、真面目だからこそ笑える、演者のそんな本気の演技が随所に垣間見えた。

◆ラスト
その場からつまみ出されつつも、助産師の大阪府民(くわばたりえ)が朝日奈央を助けるラスト。大阪府民の人情深さ、京都、神戸の気品の高さを強調しつつ、エンドロールでは“咲いた咲いたまた咲いた”のはなわの楽曲が。ディスれるのは郷土愛、土地土地への愛着や親しみがあるからこそ、と訴えているようなあたたかいラストは、定番な展開ながらも安心する(それを差し置いても“ネズミーランド”は訴えられたら1発アウトだが笑)。一方で、百美を演じた二階堂ふみは、「描き方はバカバカしくくだらないけれど、争い、分断って引いてみるとこれぐらい滑稽(こっけい)なもの」と語る。無理やりな発想なのかは置いといて笑、本作の目線を世界で起こる衝突や争いに当てはめれば、そんな考え方も腑に落ちる。何も考えずにバカ笑いできるエンタメ作品ながら、本作は戦争がいまだに続く世界に平和を訴える(?笑)実は深ーい作品、と捉えてみるのも面白い。

◆関連作品
○「翔んで埼玉」('19)
前作。興収37億円、日本アカデミー賞では最優秀監督賞を含む12部門を受賞した。プライムビデオ配信中。

◆評価(2023年11月23日現在)
Filmarks:★×3.8
Yahoo!検索:★×3.9
映画.com:★×3.7

引用元
https://eiga.com/movie/95511/
https://ja.wikipedia.org/wiki/翔んで埼玉#実写映画
てっぺい

てっぺい