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管理人のmoneのレビュー・感想・評価

管理人(2020年製作の映画)
3.7
・背景
ナチ時代の文化・思想統制としては焚書が有名だけれど、北欧を民族ヒエラルキーの最上位においたヒトラーは、芸術分野でも「北方人種」的作品を公認芸術に、前衛美術は「退廃した」ものとして位置づけた。(「退廃論」はユダヤ人作家ノルダウの理論を悪用)
ナチ時代の文化統制に対する人々の細やかな抵抗を描いた作品。

・感想
表現に対する評価は時代によって可変するものだからこそ、モノそれ自体が存在し続けることには本当に価値がある。Caretakerとして作品を守ったヴィルヘルム、作品押収時に見逃したナチ党員、責任者として文化統制に抗い続けた学芸員(あるいは館長?)は当時の状況下でできる最善を尽くしたのだろう。

画家アニタ・レーは今回初めて知ったけれど、自画像が素晴らしい。戦後のシーンでヴィルヘルムが飾っていたのは、同じく退廃芸術とされた画家、フランツ・マルクの作品だろうか。

・邦題について
日本の美術館で言うとCaretakerは何に該当するのか、考えてしまった。保存修復士が一番近い気もするけれど、展示まで行ってるし…「専門家ではない」とヴィルヘルム自身が言っているから学芸員ではないことも明らかだし…美術館勤務者からしたら厳密には管理人に該当する役職があるか疑問が残るところだけど、作品としては一番しっくりくる邦題でセンスを感じた。
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