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ミーシャと狼のeulogist2001のネタバレレビュー・内容・結末

ミーシャと狼(2021年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

ホロコーストの犠牲者で山野を狼と暮らしたというミーシャは実はカトリック教徒で、父親はベルギーのレジスタンスでありながら、その自慢癖で捕まり、仲間を売った裏切り者だった。結果的に彼女の両親はドイツの強制収容所で死んでしまう。

その後、彼女は裏切り者の娘として戦後を過ごし、そのせいか空想癖が強く長じて、「ユダヤの隠された子どもとして幼女にもらわれたが大切にされず養父母から逃げてドイツからベルギーの実の父母に会うために山野を狼と暮らしながら彷徨った」というウソの自伝で20年にわたり大儲けしたが、結局、真実がバレてしまった。

小さな嘘が現実の欲望と絡まり、周囲の「信じたい」願望ともリンクして更なる自己増殖していったということか。

これを見破った家系史の専門家のしぶとく丹念な調査。そこにも注目。

こうした詐欺まがいの事件は経済、なかでもユニコーンで多いし、うまい儲け話や悪徳商法でも話が絶えない。まさに「欲望という名の電車」ならぬ欲望という神に人々がたやすくコントロールされるような構図が浮かぶ。

身の程を知り調子に乗らず、甘い話や過ぎた美しい物語には眉唾する。明日は我が身とならぬよう気をつけたい。
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