生に抗い今を生きる。ツチヤタカユキはまさに笑いに生けしカイブツや。
世の中の慣習や上下関係、忖度、そんなもんクソ喰らえ。笑いのネタ作りで狂ったように日々を過ごした男の悲喜劇。とはいえ人に生かされてる。
居酒屋のシーンは号泣。菅田将暉がええ。
ツチヤタカユキの話は詳しく知りませんが、それでもこの映画の潔い構成に唸らせられ感情がエグいぐらい揺り動かされました。
ハッキリ言ってこの映画はこの主人公に共感するものでもないし、共感を目的には作られていません。
下手したら主人公の性格に嫌悪感すら示す人もいるでしょう。
それでも彼のような人間はいるだろうし、彼のような人間に手を差し伸べる人もいるだろうということ。あとは誰よりも味方で居続けて「本当に死ぬのはやめて」と言ってくれる親がいる。
救いようがないぐらいの人嫌いで人間関係不得意人間。
彼と正反対な人間として前原滉演じる氏家という存在がこれまた映画作品としての面白味を増しています。
ミカコやピンク、そしてベーコンズの西寺と、彼に手を差し伸べいつも支えになってくれている人間がいて、それにすら気づかない。いや、気づいてもどうしようもできないのがツチヤという人間だったのかなと。
どこまでいっても彼はお笑いの虜で、だからといって忖度はできないし、自分の考えるネタがホンモノだと信じ込んでいる。だけど、お笑いの対象は彼に手を差し伸べない、彼を小馬鹿にするような大衆だという皮肉も相まって「生きることに抗いながらもなんとか生きている人間」というユニークさを作り出しています。
この映画に感情を揺さぶられて、改めて自分は映画に“共感”を求めているわけではないんだなと感じました。
人間は完璧じゃない。足りないからこそ手を取り合ったり、自分にないものを持っている人に惹かれたりするんだろうなって再認識できた傑作です。
〈キャスト〉
ツチヤタカユキ(岡山天音)
おかん(片岡礼子)
ミカコ(松本穂香)
氏家(前原滉)
水木/ベーコンズ(板橋駿谷)
西寺/ベーコンズ(仲野太賀)
ピンク(菅田将暉)
※2024年新作映画1本目
※2024年劇場鑑賞2本目
