HAL8192

笑いのカイブツのHAL8192のレビュー・感想・評価

笑いのカイブツ(2023年製作の映画)
3.7
実話ベースの現代お笑いの裏側

原作がかなり実話ベースの私小説なので、どこか見覚えのあるテレビ番組や元ネタの芸人さんが伺える。この辺の知識がないと、面白さ半減なので、結構コアファン向けではある。

元ネタの芸人(オードリー?)をラジオでガッツリ追っかけていれば、面白い部分もあるのだろうが、個人的な知識不足もあり、ところどころ分からない部分もあった。

ただ基本的には不器用な男の暗いお笑い青春譚に仕上がっているので、それなりには楽しめる……のだが、この主人公が曲者!!!!

お笑いのネタを考える才能はあるのだが、とにかくコミュニケーションが下手。致命的に下手。一般生活に支障をきたすレベルなので、人間関係で拗れる拗れる。

言葉足らずで、愛想がなく、口を開くとつい暴言を吐いてしまう姿は、映画としては魅力的に見える。ネタへの努力と才能が観客にはわかるから。だからこそいっそ可哀想に思えてきてしまう。

カラオケのバイト中に客の食べ残しを漁り、年下の後輩に叱られるシーンや体験ホストで食い繋ぐところなんて、マジでキツい。

そこで登場するピンク(菅田将暉)というキャラクターが良かった。半グレの気のいい兄ちゃんという役どころの実在感があり、後半の優しさ溢れる「地獄」への言及がとても刺さった。

世間に嫌われる主人公は、世間を笑わせるために必死になっている。そんな皮肉な地獄で輝く主人公。そのしょーもない必死さが嫌いになれない。
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