チェさん

笑いのカイブツのチェさんのレビュー・感想・評価

笑いのカイブツ(2023年製作の映画)
3.6
「やるだけやって、燃え尽きたらそれまでじゃ。」

久しぶりにしっかり映画に没入した。
なのに主人公には全然共感できないという矛盾にモヤモヤが拭いきれない。
主人公の視点に立って主人公の感情を自分ごとのように感じられるのに、流れ込んでくる感情に対しては否定しかないという、もはや自己嫌悪みたいな感情…そういう意味では、すごい映画体験だった。
純粋さと自己中心さからくる圧倒的ストイックは、僕が失ってしまったものだからか羨ましくもあり、同時にちゃんとやれよという怒りにもつながったなあ。
「本当のお笑いやりたいんだったら、本当じゃないことも飲み込んで徹底的にやれよ!」「気持ちいいことだけして、しょーもないけどしょーもなくないことにつながることやらないとかクソかよ!」と。「"人間関係不得意"とか言って逃げんな、こちとら人間関係不得意でも得意そうな顔してやってトイレで腹下しとんじゃ!」と。

まあでも、主人公は嫌いだったけど、それは自分の嫌いなとこでもあるわけで、実はこの映画がしっかり刺さってる証拠でもあるんだろうな。シリアスなシーンにも大喜利をねじ込んでくる演出はコントラストあってとても良かったし、映像もふつうに綺麗だったし、説明的なカットもなく、トータルとてもシンプルな映画だった。

僕も、主人公があけた壁の穴から見たしょーもない原風景を思い出しながら、しょーもないことも引き受けてちゃんと仕事しようと思えたことが、1番この映画を見てよかったこと。
チェさん

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