Ninico

笑いのカイブツのNinicoのレビュー・感想・評価

笑いのカイブツ(2023年製作の映画)
4.5
実在する伝説のハガキ職人ツチヤタカユキの私小説が原作。作中でツチヤの才能を見い出し、東京で作家として仕事をさせる漫才師として登場するベーコンズ西寺とは、オードリー若林のことである。

非常に面白い映画であるが、既にレビューで散見される通り、主人公がコミュ障かつ尖り過ぎている為共感しづらいところはある。しかし、自分と重なる点が少なくても最後まで物語に集中しツチヤタカユキという人物を興味深く鑑賞させる力がある脚本、演出、演技となっていて楽しめた。

舞台となる時代は、既にオードリーらが切り拓いた二軍が一軍をいじるような、加害性の無い笑いは一般化してはいたものの、ツチヤは二軍どころか誰にも相手にもされない社会不適合者として描かれている。そういう特殊な人物がお笑いの世界で生きることは難易度が高いのであるが、そのツチヤの才能と努力を認めて根気強く励まして育てようとする西寺(若林)の柔らかな情熱に胸を打たれる。

全体的に、お笑いの作家の成長物語というよりは孤高のアーティストの創作の苦悩を描いた映画という趣き。
ちょうど今、松本人志らが創ってきたマッチョな笑いの時代が終焉を迎えようとする中で、この作品にはお笑いの多様性、可能性を見せつけられた感じがした。
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