若色

笑いのカイブツの若色のレビュー・感想・評価

笑いのカイブツ(2023年製作の映画)
3.8
間違いないキャスト陣。特に主役を務める岡山天音さんのカイブツさが見もの。

笑いに執着し、笑いに取り憑かれたハガキ職人のツチヤタカユキの半生を描いた私小説が原作の映画。
ツチヤはいつもパンパンに膨らんだ風船を抱えているよう生きる。わずかな突起で破裂しそうな危うやで、観ているこちらもヒリヒリしてくるような不器用さ。こんな繊細な生き方では、自身も周りもつらかろうに。コミュ症の極みのような「人間関係不得意」のツチヤには、その生き方しかできない。
彼の過大なまでのひたむきさには多くの人が共感できず、彼を変人扱いするが一握りの理解者の中に新進気鋭のお笑い芸人ベーコンズの西寺(仲野太賀)がいたことで奇跡を生む。神様はそこまでツチヤを見捨てなかった。
西寺はオードリー若林さんであり、最近だたま若林さんのエッセイを読んでいた身としては、若林さんがかつて抱えていた大きすぎる自意識ゆえの生きづらさもわかっていたから、本作で西寺がツチヤを少しずつほぐそう、社会に馴染ませようとしているところにグッとくる。
監督は吉本興業系の出身のようで、お笑いの描き方、愛が伝わる。とても丁寧な作りの映画だ。
本作を観た後、是非YouTubeに転がっているオードリーのANN(オールナイトニッポン)のツチヤさんとのエピソード集まとめを聴いてほしい。映画のツチヤの答え合わせのようで、ツチヤが生きてくれていて、オードリーと出会ってくれて、ありがとうと思った。
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