あぶりかんぱち

笑いのカイブツのあぶりかんぱちのネタバレレビュー・内容・結末

笑いのカイブツ(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

これだけ苦しくてどうしようもない葛藤の上に『笑い』がある。

一心不乱にネタを生み出し続けることだけに生きがいを感じていた男が、外の世界に出て周りの人とぶつかりながら『誰にも邪魔されず面白いものを世に残すこと』と『誰かと共に社会で生きていくこと』の狭間で葛藤する、そんな様を岡山天音の怪演でたっぷりと味わえる至極の1本でした。

身を削り、頭を掻きむしり、狂いながら彷徨い歩く、そんな地獄にお前が居てほしいというピンクの言葉がもう一度ツチヤを東京に向かわせたんだろうな、というのが胸熱。
更にその後大阪に帰ってきたことを懐かしがる育ての親に『ありがとう』とか『笑ったほうがええ』と言えるようになるのは『カイブツ』から『人間』に生まれ変わったのかな…

と思いきや、壁をぶち壊してみたりパンツ一丁でネタ帳に鉛筆を走らせたりする姿はやっぱり『カイブツ』なんだよなぁ。エンドロールのなんとも言えない不協和音も相まって、その不気味さを余韻として残すラスト、個人的にはかなり刺さりました。

何も無いところから面白さを生み出す『創作』の真髄が詰まった作品だと思います。良い邦画。何かを食べたり飲んだりしながら見るのは非推奨(個人的に)。
あぶりかんぱち

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