おなべ

女神の継承のおなべのレビュー・感想・評価

女神の継承(2021年製作の映画)
3.7
◉ 『コクソン/哭声』のスピンオフ作品的立ち位置のPOVホラー。パッケージの強烈なビジュアルと、とにかく面白そうな予告編に惹かれ鑑賞(楽しみにしてたから、予告は2回目以降は目を閉じて見ないようにしていたのSA⭐︎)。

◉原案は『チェイサー』『哀しき獣』『コクソン/哭声』でお馴染み《ナ・ホンジン》監督。本作のプロデュースも務め、タイの映画監督《バンジョン・ピサンタナクーン》監督とタッグを組んだ。2人は、撮影の事前準備に時間をかけ、30人以上の祈祷師や専門家に取材を行い、本作を制作したという。

◉タイ東北部のイサーン地方を舞台に、閉鎖的な田舎の村で脈々と継承されてきた祈祷師一族の物語を、ドキュメンタリーの撮影隊が記録する事に。しかし、次々と不可解な現象が起き始める…。

◉評価ポイントは何と言ってもやはり、役者陣の怪演に次ぐ怪演。主演、助演、脇役、モブキャラに至るまで、全員に拍手を贈りたい。特に、発狂・狂乱・絶叫シーンは真に迫ったヤバさが感じられ、他作品で数々の気狂い人物を見慣れている自分でも、そのぶっ飛び具合に大満足。「本当に憑依しているのでは…?」と感じさせるほど、体を張った演技に高評価。

◉物語の設定やストーリー性は、試行錯誤を伺える出色の出来栄え。信仰や精霊、儀式といった非科学的要素を存分に盛り込み(←元々のコンセプト)、散りばめた伏線を回収しつつ、鑑賞者を混沌と絶望のどん底に突き落とさんとする製作陣の熱い心意気が伝わって来た。その一例として、小物や衣装を含め、祈祷師と儀式がかなりリアルで、本物さながらの様相を呈していた点が良かった(とか言いつつ、本物を知らないけど…)。

◉尚且つ、舞台設定が絶妙なのも評価ポイント。森が近くにあったり、きちんと道が舗装されてなかったり、廃ビルや廃屋が沢山あるような鬱蒼とした感じで、この土地のエキゾチックな空気感や「田舎の村」が醸し出す閉鎖的な雰囲気が、本作と相性抜群だった。

◉突き放す終わり方もなかなか。ただ、オチに関しては、『コクソン/哭声』を鑑賞済みの人は読めてしまうかも。











【以下ネタバレ含む】












◉上記でベタ褒めしたものの、評価が低めな理由は「モキュメンタリー」の整合性と演出。と言うのも、詰めるべき部分を詰めきれてないのが気になったのと、怖がらせようとしすぎてそれが画面越しに漏れ出てしまってる点が、モキュメンタリーやPOVの良さを半減させてしまってる気がした。(←何様ッ⁉︎)

◉個人的には「モキュメンタリー」の良さとは、編集無しのありのままの映像だと思うから、そこにBGMやSEで恐怖を煽ったり、演技的なセリフの言い回しや、意図的なカメラ割の演出が為されたら、一気に「作り物感」が出てきて冷めてしまう(ツッコミ所につながる)。これが「モキュメンタリー」としてではなく、純粋なサイコスリラー/ホラー作品としてだったら評価はもっと高くなってたと思う。題材や設定が面白いだけに、残念さが残る。撮影クルーのプロ意識には脱帽だけど!

◉物語の中盤からは『パラノーマル・アクティビティ』『バイオハザード/ヴィレッジ』を足して2で割り、『コクソン/哭声』を再現した感じで、目新しさという意味ではあまり感じられなかったのが本音。POVホラーならPOVホラーを、スリラーなら地に足着いた物理的スリラーを突き詰めて欲しかった(実はかなりビビってたのはココだけの話…)。

◉夢に出てきた、剣を持った赤いふんどしの悪霊のビジュアルを見てみたい!






※レビュー溜まり気味だけど、取り急ぎレビュー。
おなべ

おなべ