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女神の継承のsymaxのレビュー・感想・評価

女神の継承(2021年製作の映画)
3.7
"この地方には沢山の精霊がいる…"
"いい精霊もいれば、悪霊もいる…"

タイ東北部山間の小さな村では、女神"バヤン"が精霊と崇められ、とある一族の女子が代々祈祷師として継承されてきた…

この地方を訪れた撮影クルーは、女神バヤンの祈祷師ニムの密着取材を続ける内に、ニムの姪ミンの身に起こる奇妙な現象を捉え始める…それは祈祷師の代替り現象なのでは?との思惑から、ニムだけでなく、ミンも取材対象として撮影し始めるクルー…カメラが映し出したのは…

衝撃作"哭声/コクソン"を監督したナ・ホンジンが製作した"もう一つのコクソン"とも言える更なる衝撃作…

今作は、モキュメンタリー方式の演出なので、POVが苦手な私は、鑑賞前には一抹の不安があったのですが、始まってみると画面が無駄に動く事がなく、むしろ作品にどっぷりと浸らせてもらいました。

本格的に話が動き出すまで、タイの美しい風景と共に、そこに生きる人々の生活や信仰を細かく、丁寧に丁寧に丁寧に丁寧に世界観を作り込んでいまして、祈祷師のニムなんか普通のおばちゃんで妙にリアル…でも姪のミンだけが今風の美人さんで周りから浮いた存在に見えるという…よく出来てます。

前半は何も起こらない中で、雨季なんでしょうか?じめっとした空気感が漂い、徐々に異質且つ異様なモノが画面に写り込んでいき、不気味さのボルテージを上げていくという中々高度な演出がされており、スローペースでも飽きる事なく、画面から目が離せません…この前半が面白いのなんのって…そして、話が動き出すと、そこからは…そりゃあもうあなた…壮絶で凄惨で最恐…

待ち受ける怒涛の展開は、ノンストップで…見事な鬼畜の世界がそこにあるのです…

ただ、前半のなんだか訳わかんないけど怖いという感覚に比べると、後半の壮絶な展開は見た目のインパクトは強いですが、恐怖の描き方に既視感が強く、せっかくの前半部の良さを帳消しにしてしまった感が非常にもったいない…前半の緊張感を最後まで貫いた方が怖さという面では何十倍も何百倍も面白くなったのでは?と残念でなりませんが、最後に流れるニムのインタビューが、この作品に奥深さを与えているように思えます。

見た目のグロはそれ程ありませんが、人の心を逆撫でする気持ちのグロさはピカイチですから、ホント鑑賞後はゲンナリぐったりです…
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