なべ

女神の継承のなべのレビュー・感想・評価

女神の継承(2021年製作の映画)
2.5
 どうしよう。何も書くことがない。
 絶望的につまらないわけじゃないけど、たいしておもしろくもない。観終わって出てきた感想が「どうでもいい」だったから。131分もかけて味わうものが何もないってどうなの⁉︎
 ナ・ホンジンは「哭声」の続編として祈祷師(ファン・ジョンミン)の物語を考えていたのだという。いいよね。観たいよ。それがなんでこうなるのさ?
 モノにならなかったアイディアをタイのスタッフに任せて、自分はプロデュースに徹するって、それズルくない? 失敗したらタイのスタッフのせい、成功したら自分のおかげってか。

 ホラー映画を撮るときつくり手は、どういう恐怖を描くのかをまず考えるはずだ。脚本家も監督も、自分の“怖い”と向き合うことになる。「キチガイが誰彼構わず生皮を剥ぐ」を怖いと思う監督もいれば、「悪魔が世界を乗っ取る」のが怖いと思う脚本家もいるだろう。
 ぼくが一番怖いのは「エクソシスト」。この作品で少女に取り憑いた悪霊は、世界征服を企むわけでも、邪教徒を増やすわけでもない。ただ無垢な少女を邪悪なものに貶め、周囲に絶望と無力感を与えるだけ。でもぼくにはそれが何より怖いのだ。観ているこちらの信仰や信じるものを揺るがせにくる演出に震えるのだ。では、女神の継承で描かれた恐怖はなんだったのだろう…。一応それは書かないでおくけど、どうでもいいとは思った。少なくとも犬鍋屋の犬の恨みつらみはちょっと受け入れ難い。そしたら寿司屋の大将は魚に呪われるのかとかチラッとでも想像したら笑っちゃったもん。
 本作で描かれた恐怖シーンはすべてどこかで見たものばかり。真夜中の徘徊、動物の虐待、人を喰らう、どれもこれもありふれてる。あ、これ知ってる、これも見たことある、出たっこれもだ…それは恐怖と最も離れたところにある感情だ。こわくねえ〜。もっと知恵を絞ろうぜ。
 フェイクドキュメンタリーの形式もマイナスに働いていて、観ていてしんどいだけ。体裁のツメも甘いしね。たぶん出演者の演技力が低いのを誤魔化すためにそうしたんだと思うけど、怖くないのにひたすら疲れたもんなあ。普通にストーリー立てて、韓国で巧い役者で撮ってたらもうちょっとマシになってたかもしれないのに。

 途中退場していった3人組がいたが、ぼくにはそんな勇気はない。だって出たあとで急におもしろくなったら悔しいじゃん。でも彼らはその時点で見切りをつけたんだよね。こいつはいくら待ってもおもしろくはならないと。つまらないものを見るくらいなら、その時間を他の楽しいことに使いたいと。うん、それ正解。
なべ

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