hawelka1992

女神の継承のhawelka1992のネタバレレビュー・内容・結末

女神の継承(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

怖かった。ずっと緊張感が張り詰めていて、画面から眼が離せない。

タイ東北地方の、女神の一族の話。神、あるいは精霊、というと、どうしても西洋の神的な、人々に恵みを与える人間の上位の存在として擬人化された神々を想像するが、アジアにおける神というのは、やはり少し毛色が違うなと思った。我々は神に供物を捧げ、平伏すが、神は一方的に災厄を与える。畏怖すべき存在であり、軽んじてはいけないのだ。ましてやコントロールしようだなどと傲慢なことを考えるものは、残らず神の怒りをうける。

ドキュメンタリー方式で、女神の一族の巫女を追ううちに、異変を起こした巫女の姪が出てくる。その姪の様子を観察しながら、さながらエクソシストのようなものがたりであり、作劇はパラノーマル・アクティビティのようだ。ほのかに日本のホラー映画のような演出も感じられる。

凄いなと思ったのは、巫女の儀式などの細部の作り込みのリアリティと、後半のジェットコースターのような恐怖の展開だ。

儀式の道具や、巫女であるニムの雰囲気が、ドキュメンタリーのような作りと相まって、全体に緊張感を生んでいる。謎が徐々に明かされつつ、次の謎を呼ぶ展開も、ホラーに必要な画面から離さない力を感じる。そして、後半3-40分の怒涛の展開は、逃げ出したくなるが画面から眼を離すことを許してくれない。

そして、ラストをみると、このドキュメンタリー方式であった必然性が観てとれる。時折感じる違和感も、作り手側の手の内であることが明かされる。覗き見するようなすけべ心を持つ不遜な輩は誰なのか、思い知らされる。

男性たちは添え物のような、愚かな存在としてのみ描かれる。映像をとっているクルーも男性しかいないのが象徴的だ。ユタやイタコといった日本の例からも分かるように、古来から依代となる存在は女性であり、そこには生理や出産といった現象とは不可分なのだろう。生理や依代の継承というアニミズム的なモチーフの使い方も、リアリティを醸し出す一助となっているのだろう。

観た後は誰もいない部屋がやけに静かで、恐ろしいものに感じるような映画であるが、また観たいと思わせるような魅力のある映画だと思う。
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