YAEPIN

女神の継承のYAEPINのネタバレレビュー・内容・結末

女神の継承(2021年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

ガタガタ震えながら、この映画を観ようと思った自分を直前まで恨みながら、なんとか継承してきた。

正直怖くて後半下向いている時間も長かったので、完全に強がりなのだが、本作は人間の認知や精神医学などの観点から捉えると非常に興味深い。

つまり、女神バヤンも強大な悪霊も、それを思う力が強ければ強いほど、憑依の影響が強くなるのではないかと考えた。
逆に言えば、両者を信じようとする社会通念や霊感が備わっていなければ、直接的には影響がないのではないか。
(憑依状態になった人から危害を加えられる可能性はある)

というのも、これだけ凶悪なパワーを持つ悪霊が猛威を奮っていながら、それを何日も撮影していたカメラマンたちは、誰一人身体や精神に異常をきたしていなかったからだ。
言ってしまえば、本来バヤンの巫女を引き継ぐ必要のないとされていた男性陣やその家族にも、あれだけ近くで寝食を共にしながらも、儀式までは特に異変が見られない。

主人公ニムと姉のノイ、その娘のミンは、
・自分の家系の
・女性が
・ある一定の年齢に達する
という条件が揃った時、巫女を継承しなければならない、という半無意識的な自覚、及びコミュニティの共通認識があったからこそ、身体的、精神的な苦痛を味わったのではないだろうか。

その苦痛の内容としても、長引く生理やそれに伴う体調不良、精神の不安定、性的欲求の増長など、平たく言えば思春期の女性に誰しも訪れるホルモンバランスの乱れである。

こうした女性の繊細な体調変化は、男性からすれば予測不能で恐怖の対象でしかないだろうし、そのような感情から女神信仰や巫女という役割が発生したのではないかと考えた。
日本で巫女の役割も担った卑弥呼は、体質的に気圧やホルモンバランスの変化に敏感だったという説も読んだことがある。

ミンは、ちょうど継承の条件が揃うタイミングで、秘密の恋人と父親の死に目に遭い、父親の家系で不運が続いたことを想起する。
言い知れぬ不安や喪失感を抱えながらも周囲に相談できず、無意識下で膿んで増殖してしまったものが、結果的に悪霊の存在と結び付けられてしまったのだろう。

まあつまりは、上記のように、グダグダと本作で起こる怪異のシステムを考えていないと、まともに画面を見られないくらい怖かった。

モキュメンタリーとしての作りは『呪詛』よりもはるかに優れており、違うと知りつつも初めは本当にドキュメンタリーだと思って観ていた。
主人公のニム役の女優は、ドキュメンタリー向けの演技が素晴らしく、カメラを意識しすぎない距離感の取り方が抜群だった。

とはいえ、やはりカメラの位置や台数の不自然さ、そしてそもそも本作の編集は誰がしたのかという問題が気になった。
例えば怪しい建物にニムが入っていく際に、不穏な音楽が流れるが、それはその建物がいわく付きであることを知っていなければ付けられないし、ドキュメンタリーとしての正確性に欠ける部分はあった。
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