このレビューはネタバレを含みます
人間や動物や虫などあらゆる怨念の融合体。
それが今作のヒロインであるミンに憑いた悪霊の正体だった。
同じくこの映画の構成自体が、往年の名作ホラーの要素を詰め合わせた、恐怖の幕の内弁当となっている。
「じめじめ湿度の高いアジアの山村」という、不穏なダシのきいた舞台設定を下味に、以下の要素が終始ゴンゴンに恐怖を煽ってくれる。
悪魔憑きのヒロインの不審な行動を監視カメラで記録する『パラノーマルアクティビティ』という具材。
汚言を吐き散らし蛮行を繰り返す女の子の矯正を試みる『エクソシスト』という具材。
森の中を「あひゃ〜!」と逃げ惑いながら律儀にPOVし続ける『ブレアウィッチ』という具材。
宗教モノに欠かせない「なんだかよく分からないとにかく禍々しい儀式」もある。
謎の汁ゲボも吐く。
さっきまで正気だった人物が無言でカメラに背を向け続け「あ、こいつ"向こう側"にいっちゃったな…」と絶望感を与える定番演出なども見られて細かい部分まで楽しい。
そして凄絶なカタストロフをこれでもかと見せつけるお祭り状態のクライマックス。
さらにラストでは、上記までの正攻法の怖がらせ方と違い、婉曲的で底意地の悪い方法も取られる。
劇中ずっと気丈に振舞っていたニムの心が折れることで、それまで彼女をSAN値維持の拠りどころとしていた観客の心までくじく演出だ。
このシーンで厭〜な気分と余韻を残して終幕。
緩急自在な見せ方で最初から最後まで楽しませてくれる、珠玉の土着信仰ホラーでした。
これは賞賛なのだが、完全に憑かれて以降のミンはあまりに気持ち悪くて吐き気がしてきた。
あと『呪詛』のイッヌは無事だったけど、今作はペットも赤ちゃんも容赦なし!皆殺しです!