スコセッシフォールド全開

女神の継承のスコセッシフォールド全開のレビュー・感想・評価

女神の継承(2021年製作の映画)
4.8
インタビュー、資料映像的演出、光度、焦点、遠くからのショットの音声、説明字幕。被写体を取り巻く様子を自然に見せる、情熱大陸型モキュメンタリーホラー。"それ"目的で撮り始めていないのが興味深い。日常に潜んでいる感がたまらない。
ゾンビシーンではなく、その兆候を、周りの救済活動を長ったらしく見せる。記録として正しい。編集して、清くカットをしてリズミカルな状態で我々にお届けしているのもリアルを誘うし、なにより映像作品として誠実だと思った。
追い払われたら面白い映像を撮れなくなるという思考なので、反道徳的な行為への注意といったお節介は出さない、インタビュー以外のくだりでの出演者への干渉がほぼない。"ほぼ"と言うのも、撮影班には倫理観の境界があり、『ナイト・クローラー』的な刺激を求める人間の怖さを排除して集中させにくるのが良い。ただそこにはリアルが映っている。しかし後半、倫理観のある撮影班はどこへやら。次第にカメラを回し続けることに抵抗がなくなっていく。自身が襲われても、カメラを持ち、撮り続ける。『もう、助からないから何かアクションをしたい』という諦めを、生きる気概を失うことが恐怖の根源なのだと感じさせる転換が面白い。決して快感などではないのがリアルでやっぱり素晴らしい。
定点カメラの映像。動き、食欲、眼光がまさに獣のそれ。隅からヒョコッと出てくるところがハイライト。ずっと居たことに気づかない的な奴が一番こえんだ。"ミン"と呼んであげないでほしい。いや、呼ばなければ彼女が親族であることを忘れてしまう。
ポンちゃんの鳴き声で安心。


BGMが余計。
カメラが一人称になってるゴチャゴチャ。後半は逆に効果的で、それでいい気がした。
130分はわりかし長い。