カツセマサヒコ

THE FIRST SLAM DUNKのカツセマサヒコのレビュー・感想・評価

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
4.5
(注:このレビューはリアルタイムでスラダンを読んでいた影響で中学高校六年間をバスケ部員として過ごした人間が書いています)

言いたいことがありすぎるんだけどまず予告編でマイナス5億点になってるのどうにかしろ!!!!いくらオフェンスリバウンドで4点分の活躍しても、5億点は覆せないんだよ!!!!!桜木でもわかるわそんなん!!!!!!

僕だったらどうするかなあと考えたんですけど、今の予告編のラスト0.5秒くらいに、河田がニヤって笑うシーンだけ入れたいです。

それだけで!!!原作ファン全員!!!劇場に向かうだろ!!!!!!そのくらいは見せないと!!!!!!不安でしかないんだよ!!!!!!俺みたいな!!!!!好きな漫画のアニメ化に!!!散々苦しめられてきた人間は!!!!!!!!!

少しすっきりしたので冷静に感想書きます。僕これで小説家なんです信じてください。

(以下ネタバレです。ご注意ください)


・宮城リョータを主人公にする、という大きな視点の切り替えについて

うまくいってる点とそうでない点がある気がするんですけど、まず良い点として、バスケにおける「ポイントガード(以下PG)」というポジションが主人公にとても向いてると思いました。PGはドリブルやスピードといったテクニック面も必要だけれど、それ以上にたとえば山王の深津が得意とする「ゲームメイク」を求められる役割が大きい。自分で得点を決めるのではなく、周りを立てる。得点につながるパスを出す。そういう役割がPGじゃないですか。

PGというポジションと物語の主人公は、役割が似てると思うんです。物語において主人公が語り手となったとき、自然とその周りの人間は主人公からスポットライトを浴びて輝くことになる。ほとんどの物語において主人公に無関係なところで話は進まないからです(ただし伏線やスピンオフをのぞく)。

だから物語における主人公って、実はサッカーでいえばFWよりもMF的であり、バスケでいうならPG的だなあと。今作でPGである宮城が主人公になることで、他のメンバーの活躍が自然と引き立てられている気がしました。これは桜木が主人公ならおかしなことになってると思う(だってミッチーとか流川のほうが断然活躍するんだもん。ゴリは映画だとさらに脇役ぽいけど)。だからPG宮城を主人公にすることがとてもうまく機能していると思えました。

あと、矛盾するようだけど、これまで明かされることがなかった宮城の過去や未来が語られたことで、今や「メンバー全員が主人公になれるし主人公だった」ということが証明されたとも思う。それぞれに山王戦に挑むモチベーションは異なるが、最終的には「勝ちたい」に向かう、その途中経過を描いてくれたことがただただ嬉しかった。同時に山王メンバーもそれぞれの人生がある、ということを沢北の回想シーンで感じさせてくれていたとも思う。(あの神社のシーン最高だったよね…ああいうの嬉しいね…)

悪い面としては、宮城を主人公に添えたことで多くの回想シーンが必要とされ、試合の躍動感とヘヴィな人間ドラマが交互に演出されることになり、見ている側としてはそのどちらにもあと一歩のところで乗り切れず、有機的な連動とは言い切れなかったのでは?と思うところでしょうか。

試合なら試合!回想なら回想!ってもう少しはっきりとパートを区別しても良さそうな気もして、ただこれは、そうすると意外と平坦な映画になっちゃうのかなあ、、とも思うし、やっぱり難しいよね映画って。

まぁそもそも原作大好きっ子クラブの人間としては「うわーミッチーとそんなシーンあったの!?うわー流川のそんなシーンあったの!?」みたいな「秘蔵お宝映像」というか「原作未公開シーン」というか、そういうのをいっぱい見せてもらえたっていう井上先生のファンサに近いなにかに捉えられたので、井上先生が幸せならOKです(OK)。

・CGとバスケシーン

CG正直不安だったし、前半までは「PS3のゲーム画面でありそうだな…」とか思ってしまった部分もあったんだけど、予告編の時点で感じていた読み通り「これは目が慣れたら絶対に楽しい」が正解でした! むしろ後半はこれじゃなきゃ嫌だ!って感じだったかも。途中脳内で「世界が終わるまでは」と「マイフレンド」流れたわ。すごいな記憶って。

あと、原作よりも映画のほうがバスケという競技に真摯に向き合ってたと思う。漫画だったら一点取るごとに大騒ぎしてる感じがあるけど、リアルの試合ではそうはあまりならない。なぜならすぐに相手は攻めてくるから。

だから、映画版は大はしゃぎのセリフもしれーっと行われてて、いかにも試合中!って感じになってる。「いつになく入るじゃねーかミッチー!」「うっせえ戻れ」みたいなの、頭の中ではもっとはしゃいでるイメージだったけど実際に動いてるところみると淡々としてて、「あぁ、まぁたしかに現場はそうだよな」みたいな。

ただね!俺は!アニメ映画なんだから!現実じゃなくてもいいじゃんとは思ったけどね!!!!!!!!うん!!!!!!

ただ後半というか終盤になるにつれて、ワンモーションにかける時間も伸びていってて、ちゃんとプレイに見せ場があるのはよかった。桜木がリバウンドの才能をいよいよ開花させるシーンとか、もう原作よりもテンションあがったんじゃないかなぁ僕は。(それを序盤一発目の桜木アリウープからやってくれてたらさらに最高でもっと汗だくになれたのになぁ。原作版のあのアリウープ決めた時の関係者全員の「!?」ってコマ割り、ちょーすきだったから)

あとCGにしたことで全員の動きが俯瞰したときにもリアルでよかったんだけど、これによって「桜木花道がバスケ始めて4ヶ月のシロート&馬鹿」という事実がめちゃくちゃ克明に描かれていて良かった。そうなんだよやっぱアイツ、フツーじゃねえのよ、みたいな動きを画面の端々で感じられる。そもそもの桜木の動きがまだ洗練されてなかったり、ボールもらうための位置もあんまりよくなかったりするんだよね(それなのにパスくれ!ってでかい声で言ってるとか、素人あるあるな感じもちょーよかった)。これは到底主人公じゃないぞ、っていうキモさがきちんとあって最高でした。

あと細かいんだけどさ、ゴリがようやく復活してきて、桜木がハイタッチ求めたら「バチン!」ってめちゃ強く返すシーンあるじゃん。あのあと花道が「いててて」って手を貼れさせてる描写が原作にあるんだけど、それ映画でもきちんとちーーさく映ってたりすんのね。そういう原作ラブなとこ、制作陣のみなさん本当に本当にありがとうございます。大好きです。今度は嘘じゃないっす。

あとはなんだろうな、魚住のヘルプシーンがなくなってるとこですかね。まぁ仕方ないよね、コイツ誰?ってなるもんね。って感じです。てゆーかあれは原作でもあまり好きじゃないシーンというか、実際の試合にあんなやついるわけなくないですか????山王戦における最大のフィクションだよ魚住純。だから赤城の回想に置き換わっててよかったとすら思ったよ。あとあの先輩のデフォルメ悪魔みたいな書き方、井上先生だー!って感じして嬉しかったなあ。ちょこちょこ「井上先生だー!」って手振りたくなったもんな。

あとあとあと、あれだ、試合ラスト20秒くらいからの伝説の無音演出について!

もう原作ファンはあの流川と桜木のハイタッチをいつか映像で観たいと思い続けてゾンビのようにこの世知辛い世の中を這いつくばって生きてきたとおもうんですけどもね、それがようやく!映像で!見れました!!!ありがとう!!!これで死ねる!!!よかった!!!!

となったのは確かなんだけど、でも今度は原作に忠実すぎて、映画だと1分ちょいくらいの尺なのかな? になっちゃうじゃないですか、無音が。そのあいだこっちもずっと息止めてるんですけど、さすがに長すぎてもう我慢できなかったかも。いったん沢北のゴールで歓声いれて、そこから桜木のブザービーターで無音終える、くらいのほうが入り込めたのかなあ。タイミングはわからないけど、桜木のジャンプシュート入った時点で音は戻ったほうがテンション上がったんじゃねーかなあとぼんやり思ってます。とはいえ、あのハイタッチシーンをまさか映画で見られるとは思わなかったし、ラストの展開(流川があがってボール取りに行け)を宮城がゲームメイクしていたという改変についても最高に良い演出と思えたので、もう完璧ということでもオッケーです。おれ幸せです。

長く語ったつもりでも語りきれてないところはたくさんあります(ハルコさんがもっと見たかった。「あんなに練習したのに!」も「死守よ!絶対とられちゃだめ!」も見たかった。でもアヤコさんが超かわいかった。でもだったらアヤコさんパートはもっとないと感情移入しきれない、というかまぁこの映画だけで全員に感情移入しきるのはやはり無理で、僕みたいな原作大好きファンのための作品だったのかもしれない、とかね)。

ですが!とりあえず!ようやく俺の中のスラムダンクが完結されたといいますか!呪いが解けたといいますか!いやむしろ魔法にかかったといいますか!人生が報われたといいますか!生きててよかったー!!!!と思えたので!それをこの場で伝えたかったです!!!

井上先生、制作陣のみなさん、声優陣のみなさん、TheBirthday、10FEET、その他関係者のみなさん、ありがとうございました!!!!

(せーの)
バスケが!!
したいです!!!!!!!