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THE FIRST SLAM DUNKのmasaakiのレビュー・感想・評価

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
5.0
2022 12 29
2023 01 23

未来なんてないし、あっても見てる余裕ない。過去が積み重なって現在があるだけ。回想シーンと、1秒先でさえも予想不可能な現在進行形の試合シーンが交互に映されることで、それを強烈に印象づける。

誰一人として(うーん花道はそうかもだけど)、おそらく流川も、明確な勝ち筋は見えていない。それぞれのエゴやトラウマにがんじがらめにされている中で、今の自分には何ができるのか、どうやったら過去の重い影を捨て去れるのか、懸命にコートの上で"Trying to do better"している。

これは劇場版とはあんまり関係ないけど、三井の更生には、単なる感動生み出し装置としての更生以上の緊迫感がある。不良時代にずっとバスケがしたいことを隠してきた後の、「男らしくない」号泣面での「バスケがしたいです」。自分の運命を呪い、これでいいんだと腹を括ったつもりでも、本当にやりたいこと、周りからの期待、自分で感じる自分への違和感、限界___そういった処理しきれない感情が溢れた瞬間に口から出たのがあの名台詞なのだと、今となっては理解できる。わかるよ、自分の気持ちに正直になるって、たとえそれが良い方向だといえ生き方を変えるって、すんごいエモーショナル面で疲れるし勇気いることなのよね。

全員勝ちたいと思ってる。でも方向性がバラバラ。ギリギリまでまとまれない。花道が頭を使い始める。三井が走る。流川がパスを出す。ひとつひとつのパーツが合い始めると、5人はユナイトできるようになるのだ。不可能だと思われていた挑戦を達成してみせた。アベンジャーズ集結とか、『シカゴ7裁判』の終盤とかみたいに、「人間って団結できるんだ。そして勝てるんだ」っていう希望を抱かせてくれる。
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