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THE FIRST SLAM DUNKの炒飯のネタバレレビュー・内容・結末

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

「生きてるとこんなに良いものを観られることがあるんだ…」というのが初回鑑賞時の率直な感想。
子供の頃から何度も何度も読み返してきた大好きな漫画を、ン十年越しにここまで素晴らしい映像作品で楽しめるなんて想像もしなかった。

のっけから「今のイノタケ先生の絵がそのまま動いてる!」という衝撃。シブいOPから俯瞰構図での試合導入の格好良さ。
試合が始まると今度はあまりにリアルなバスケの描写に圧倒される。オフザボールを含めた選手の動き、一連のプレーのテンポ、何もかもが現実そのままのようなバスケットボールのスケール感でありながら、マンガ的な外連味も兼ね備えた良いとこ取り。
特にED主題歌の第ゼロ感がBGMとして使用される諸々のシーンはアドレナリンが上がりすぎて冗談抜きで汗だくになった。箱にさほど拘りはないほうだったが、これはぜひIMAXやDolbyで体感すべき内容と思う。
試合のラスト数十秒はまさにこれまでずっと脳内妄想してきた山王戦の映像化が完全再現、どころかそれを上回るクオリティ。凄い凄い凄い!
作品構成の都合上、原作からはカットされた要素も多いが、一方で「2年間も待たせやがって」「流川は笑った」「左手は添えるだけ」等、"原作既読者にだけ聴こえる"ように盛り込まれた名シーンの数々もニクい。

宮城リョータが主役であること、それによるウェットな家族ドラマの追加は賛否が分かれるところだろうが、完結済みの原作をそのまま掘り起こすのには興が乗らないというのが監督(原作者)のスタンスである以上やむなしと思う。
独立した映画作品として一本筋を通すための補助線として十分機能していたと感じたし、宮城目線での湘北の面々の描写も新たな発見があって良かった。
ただ、山王戦のストーリーにおいてはその主人公力によって「桜木にスポットが当たるとどうしても桜木が主人公になってしまう」現象が度々起きており、宮城を中心として再構成した映画全体の作りとちぐはぐな感は若干否めなかった。
また作中では流川のライバルとして存在していた沢北に対して、宮城が渡米して対峙するというラストシーンも唐突なものに感じられた。
難といえばそれくらいで、この令和の時代にこんなに素晴らしいスラムダンクを見せてくれてありがとうという気持ちが一番大きい。
制作過程を漏れ聞くに実現は相当難しいだろうが、ぜひ他の試合も同様に映像化してほしいと願わずにいられない。
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