ねつき

THE FIRST SLAM DUNKのねつきのレビュー・感想・評価

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
4.8
「俺は、今なんだよ」

すげえな。アニメでここまでできるならもう実写なんていらないじゃないか。私たちの愛するキャラクターが、目の前で息をして、動いているじゃないか。「アニメ映画」なんて言わせない。アニメ映画なんだけど。バスケじゃん。バスケットボールの試合じゃん。このスピード感。スポーツじゃん。

世代を超えて心を熱くするスラムダンク。バスケやってなくたって、ルールよくわかんなくたってこんなにアツクなれる。スポーツってドラマだよな。試合って、物語だよな。1点1点に意味や価値があって、それを結んで結んで結んで、勝敗がつくんだよな。私がやってきたのはバレーボール。私が指導してきたのもバレーボール。ベンチに座っていると、コートの中の選手と一体になるような感覚になる時が、たまにある。誰がどこにボールを繋ぐかわかり、心がつながった感覚になる。バレー、好きじゃなかったけど、それは好きだ。好きだったな。

テレビでスポーツをやっていても、あんまり見ようと思えないんだよな。こんなにロマンを感じているのに。なんでだろ…て考えたけど、空気感を感じ取れないから…かなと思う。画面越しに、実際にコートの中に立っているような感覚は得られない、私の場合は。
だからこの映画が贅沢だと思うのは、こんなに近くで、選手の表情や、プレーや、頭の中まで見させてくれるところだ。選手には一人一人そこまでの想いがあって、その場に立ってるんだよな。山王にだって、それはあるはずだ。…て、こんなことを考えている時点で、私はやはりこの物語を作り物、登場人物たちをキャラクターと捉えておらず、あの場に本当に「いる」人なんだって信じていて、そういう気持ちにさせてくれるこの映画と、スラムダンクという作品が凄すぎるってこと。うん。

みんな抱えている思いが、あるよな。人にはドラマがあるよな。スポーツは物語だよな。スポーツってなんて尊いんだ。終わりがあるから儚いんだね。自分が選手になってこの経験をするなんてもってのほかだし、指導者としてこの世界をのぞくのも、もうおしまいだ。いつかできる自分の子供に託そうと思う。本気で悔しいとか、本気で嬉しいとか、そういう感情で人は人らしく育っていくのだと思うよ。桜木花道はカッコイイ。



ラスト1分、私はあの場所にいて、観客と同じように口を開けて試合を見ていた。世界から音が消えて、心臓の鼓動だけが残っていた。視力は悪いはずなのに、顎から落ちる汗がしずくとなって落ちるのが見えた気がした。世界がスローモーションになって、時間が止まるのかと思った。そういうことだ。スポーツって。勝負って。そういうことだった。思い出した。
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