Ginny

THE FIRST SLAM DUNKのGinnyのレビュー・感想・評価

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
5.0
スラダン漫画読んだことなく、アニメを夏休みの再放送でたまに見たくらい。
名台詞やリバウンド王とかは知ってる程度の人間で映画も観るつもりなかったですがあまりにも絶賛の声ばかりでしたので見に行ってみた。

めちゃ面白かったです。
内容がとかではなく(内容もではありますが)魅せ方が天才的。
この凄さ、漫画の凄さを考えれば至極当然のことなのだと気付いた。漫画自体が映画的で漫画家自身が映画監督の様なものと言えるから。
「WOWOW アートドキュメンタリー #7 ティントレット ~ヴェネツィアの反逆者」でティントレットは初めての映画監督と言えるのではないかと評していたのがとても印象的で記憶に残っている。
大胆な構図とドラマティックな表現からそう評した人がいたらしい。
漫画は静止画の連続だけれど、そこには動きを感じることができる。ただの線が曲がりかすれ繋がり伸びてそこには絵を超えた動きが存在する。
鬼滅の原画展を見に行った時、連載の時系列順の展示を見るにつけ段々修正のホワイトがなくなる生の原稿を見て脳の理解が追いつかなくなっていった。炭治郎が刀を握ったこともない所から鍛え上げて上弦、無惨と戦うまで行ったのと同様に吾峠先生もとんでもなく進化してるのだとヒシヒシと感じた。目の前にあるのはインクによって紙に描かれた線の集合体なのに、目の前にあるのは、その光景を捉え一瞬に留めた本物だと伝わってくる(特に上弦の壱と悲鳴嶼さんの闘いの見開きが迫力すごかった)

漫画の何が好きって。
白紙に一から描くという気の遠くなる様な作業を一コマ一コマ行うなんて。指も手首も腕も肩も腰も背中も目も頭も。脳全体身体全体絞り出して苦労して魂削って。そこまでして描いてくれる作品。凄いものが詰まってる、そう感じてる。
視線誘導を考えたコマ割り、効果的な顔の表情、アオリ、俯瞰、集中線、誇張表現。

山王の選手の動きに流川が驚いて、目アップのコマの挿入や、注目のための集中線…漫画的な表現もあるけれどそれを多用して漫画によせすぎないのも良い。

緊迫するコートの中で眼光鋭く目だけ動くシーンで画竜点睛という言葉を思い浮かべた。
目が、生きてる。
バスケのプレーの動きも凄かったけれどそこだけに甘んじない、映すもの動かすものこのシーンの時に活かすものがきちんと考えられている。
英単語animateの意味をひしひしと感じた。

クライマックスに向けて観客のテンションを持っていく構成力には、週刊連載で闘い抜けてきた猛者の管理能力の高さに感服した。
試合のシーンが始まった時、観客全然動かんやんけモブまで気抜かんと動かせ、と導火線短いので即ギレした後、結構すぐ観客席にも動きが加わって掌返しクルーしました。

限られたページ数、左ページからのめくった次のページ、次回への繋ぎ、巻頭/センターカラー回の見せ場回の持って行き方…週刊連載ではただ面白い漫画を描き続けるのではなく緩急を持って読者を飽きさせない様惹きつけ続ける工夫がなされてると思うのですが、それを感じた。この映画の中に。
上記に書いた目を見張る漫画的表現とか序盤から出すのではなく、試合が進むにつれて盛っていく。ピークの持って行き方が上手すぎる。

試合終了に近づくにつれてドラマチックな内容が起きるのは当たり前だけど、その内容頼りにはせず、魅せ方描き方でも盛り上げていく、二刀流というか相乗効果というか。

漫画にはない要素、アニメーションの動きと音が加わることは単純に良くなるのではなく漫画のテンポの良さを殺すこともある(ONE PIECEのテレビアニメとか)。
でもこの映画は、漫画の足を引っ張らず、平成の漫画を音楽と最新技術のCGで迫力ある映画に仕立て上げられていてずば抜けたセンスを感じた。ここでこれがきたらアガるというのが、きて欲しいと思うよりも鮮やかにより高らかに繰り広げられるから見ていて楽しい。

内面や展開のストーリーはフラグ立ちまくりの全回収と胸熱展開と王道をいくもので、よくある感じではあるけれど、むしろ今のよくあるものの始祖なのでは?と思い受け入れられた。
試合中のプレーの変化、思考の進化、見ていてブルーロックに似たところがいくつかあり、少年漫画のスポ根ジャンルのエッセンスは脈々と受け継がれるのか…と思った。

ベンチのメンバーも対戦校の人も顔の違いがしっかり描かれていてかつ、それぞれの個性もありみんな好感が持てて良かった。
山王の沢北の 自分の必要な経験って言うのも胸熱だった…。
山王の監督、フレディーマーキュリーに似てる。

新しいカギのスラムダンクに乗っかった企画の「高校バスケ全国制覇の道」の中でハナコ岡部がゴリ風のメイクをしてるのですが映画見てたらむしろゴリより山王の河田の方がハナコ岡部は近いのでは?と何度も河田が映るたび思った。

山王の得点追加を、シュート入れた→スコアボードを映すじゃなくて、スコアボードだけで表現したシーンはこれこれこれー!って上がりました。全部を見せるんじゃなくて絞って効果的に見せるのが映画の醍醐味だと思うのでニッコリ。

安西先生めちゃめちゃ可愛い。
ゴリも流川も三井もリョーちんも桜木花道もみんな目をはじめ顔がちゃんと描き分けられていてそれぞれ魅力があるのが良い〜
リョーちん萌えるなと思ってたらタイプの身長だった〜

つらい過去の出来事、部活や学校生活で衝突があっても湿っぽくならずに、それを抱えながらも奮起してガッツしてエネルギッシュなところが平成初期!って雰囲気があって懐かしく、今はない空気感なので良いなと思った。
今の若い子達も、ネットの発展で陰湿に人と比べて卑屈になって虚栄ばかり追いかけ数字に振り回されるのは、ゲームボーイから顔を上げた少年のようにもうやめよ。
Ginny

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