クロスケ

THE FIRST SLAM DUNKのクロスケのレビュー・感想・評価

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
3.4
残念ながら、私としては原作との再現度を確認する作業に終始するばかりで、未知の衝撃に遭遇するという意味での感動的な映画体験は遂に得られず終いでした。

漫画史に残る名シーンである山王戦のクライマックスは、些かあざとさを感じつつも見応えはあったと思います。
ただ、どうしても各キャラが立ってない印象が拭えませんでした。辛うじて、オリジナルの主人公である花道だけは見せ場も多く、印象に残りますが、その他の登場人物は個性に深みを感じませんでした。

リョータの回想シーンの尺も頻度も多すぎる印象を受けます。その所為で試合の臨場感や躍動感、スピード感といったものにブレーキがかかったようになり、いまひとつ映画に没入できませんでした。
リョータを主人公とする上で、何か印象的なエピソードを足したかった意図は理解できますが、それならそれでもっともっとシナリオや構成を熟考する余地があったのではないでしょうか。(本格的なバスケの試合の描写とキャラクター個人の細やかな心理描写を両立させるのはかなり難易度が高いと思います。)

原作者で監督でもある井上雄彦の執念やこだわりはヒシヒシと感じます。それは試合のシーンを見ればわかります。これはこれでアリだと思いますが、私の求める最高の映画の形とは少し違うものでした。或いは、彼の思い描く壮大な構想を映像化するには映画という器は相応しくないのかもしれません。新たなアニメシリーズなど検討してみてはどうだろう、と思ったりもしました。余計なお世話ですが。

※もっと大勢のお客さんと一緒に観てたら印象も変わってたかもしれませんね。公開終了間近、夜遅くのレイトショーで、お客さんもまばらな中で観たので、会場一体となって試合を疑似体験する興奮は充分に得られていなかったかもしれません。
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