旅の不自然な出逢いを自然に撮ってしまうヴェンダースという傾き者。書けない作家、売れない女優、女芸人、元ナチス党員。不自然すぎる一座が形成され、一本道を歩く。ロードムービーのようで会話劇。
主人公のモノローグはドキュメントというより日記。風景や会話や時間を綴る。日記も文学になる。紀貫之や和泉式部、平安時代の作家が実証したことをヴィム・ヴェンダースは1000年の時を超えて甦らせた。
お世辞にも魅力がない役者陣のなかで唯一の花が13歳のナスターシャ・キンスキー。思い切って口のきけないミニョンを主人公にすれば歴史的映画になったかもしれない。