ワンコ

さすらい 4K レストア版のワンコのレビュー・感想・評価

さすらい 4K レストア版(1976年製作の映画)
5.0
【ロードムービー三部作の③/対立と、変化と】

ロードムービー三部作の最後で、三部作中、おそらく唯一、国際的な賞を獲得している作品だ。

公開当時の日本向け映像には、おちん〇〇や、ウン〇にボカシが入っていたと思うが、このレストア版は、ハッキリ映っていて、特に脱糞場面には驚く。

おちん〇〇は負けるが、ウン〇のサイズはどっこいどっこいだなとか思う(ごめんなさい。いきなり下品で......)。

さて、この作品は、1970年代であることからも分かるように、引き続き、西ドイツが舞台だ。

ドイツが東西に分かれていて、まだ、緊張感の高い時代だった。

この作品の終盤で、東西国境で米軍が使っていたと思われる掘っ立て小屋の中の米軍兵士の落書きを眺めながら、アメリカの文化に影響を受けていると思索する場面があるが、ドイツ人のアイデンティティに思いを馳せるような雰囲気があると同時に、実は、この映画自体、ロードムービーで、ロードムービーはアメリカ作品の「イージー★ライダー」で大きく注目されるようになったことからも分かるように、他の文化を受け入れ、変化していくということを肯定していることが推察される。

この肯定感が、やっぱり、ヴィム・ヴェンダースの真骨頂でもあると思う。

実は、この場面を最後に、「変化は必要だよ」というメモを残して、いわゆる”カミカゼ男”は、短いが旅を供にしていたブルーノのもとを去る。

この作品が良い作品だなと思うのは、”東西ドイツ”の国境での二人のやり取りを終盤で見せるのだが、実は、カミカゼ男の母親の死をめぐる父親との対立と和解、ブルーノの現在と過去への郷愁は、明らかにドイツの東西対立との対比として見せているし、序盤の、映画館は廃れるんだろうかという映画館オーナーとの会話は、さまざまなものや関係自体、変化し続けるという、この作品のテーマで、ブルーノとカミカゼ男の関係も、二人の今後の生き方も、ドイツ文化も、そして、もしかしたら、東西ドイツの関係も変化していくんだということ示唆し、どこかに希望を示唆しているところだ。

ロードムービーの結末は、実は、続いていくということではないかと思う。

そして、それは希望の方向を向いていることが重要であるように思える。

ヴィム・ヴェンダースの三部作を改めて通して観て、異なる特徴を持たせながら、様々なことを肯定して見せようとしたのだろうと想像する。
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