ツクヨミ

さすらい 4K レストア版のツクヨミのレビュー・感想・評価

さすらい 4K レストア版(1976年製作の映画)
1.7
映画文化の始まりと終わりを感じさせつつ、2人の男がさすらうロードムービー。
フィルム運びや映写技師の仕事をしているブルーノは、ある日湖に車ごと突っ込んだ男ローベルトと出会う…
ヴィム・ヴェンダース監督作品。特集"ヴィム・ヴェンダース レトロスペクティブ"にて鑑賞、ヴェンダース監督初期のロードムービー3部作の3作目にあたる今作は2人の男の出会いと別れを"あてどない旅"として描いていた。
まずオープニング、主人公のブルーノと老映写技師の男の会話シーンから映画はスタートする。このシーンでは老映写技師がサイレント黎明期の話と現代との違いを語り始め、現代はビデオ文化が広まり映画館に人が集まらなくなったことを嘆く。このシークエンスはまさにジュゼッペ・トルナトーレ監督"ニュー・シネマ・パラダイス"で嘆かれていたことと同じ問題を提起しているのだ。20世紀末の映画界はいかにビデオ業界に食われ、映画館産業が停滞し始めていたのかがありありと分かりちょっとした哀愁を感じた。
また今作の主題は2人の男が各地をさすらい何気ない旅をすることにあると感じた。劇中で映写技師のブルーノとローベルトはたまたま出会い行動を共にするようになっていき、ローベルトはブルーノの仕事にまでついていき同じ時間を過ごしていく。単純に言ってしまえば日常的な男友達との徒然なる日々とでも言わげな、日常ロードムービーが進行していくだけなので退屈言わざるを得ないのは確か。3時間の上映時間の中でちょっとした人間関係の綻びが心的に昇華されゆく様は少しセンチメンタルになるが、長い上映時間に対比した退屈さは拭えない。
しかしヴェンダース監督お得意?とも言うべきロードムービー感はカメラワークのダイナミックさも合間って見応えはあった。ロングショットの美しさとダイナミックな移動撮影は特筆すべきかもだが、正直この作品の魅力は掴めなかった印象だ。
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