たむ

さすらい 4K レストア版のたむのレビュー・感想・評価

さすらい 4K レストア版(1976年製作の映画)
4.0
ヴィム・ヴェンダース監督のロードムービー三部作の完結編です。
初期のヴェンダース監督作品では最高傑作であり、旅と映画への想いが描かれます。
映写技師が主人公のロードムービーという時点で、見逃せないテーマがあります。
失われゆくもの、この映画では映画館やフィルム映写機もその中に入っています。
オープニングでナチス党員であるが故に映画館が再開できなかったこと、主人公と旅をする男がカミカゼと呼ばれていることが第二次世界大戦後であることを映画のテーマにしていきます。

2人が旅するドイツは、戦後の田舎、映画が娯楽として生き残れるか、その価値も考えさせます。
これまでのロードムービー三部作の主人公同様、同じ人物が演じているのも意味が出てくるわけですが、空虚な虚無感を持っています。
カミカゼと川に車ごと突っ込んで行ったり、旅をしたり、映画を観たり上映したり、ただ流れていく時間に抵抗するような印象を受けました。
175分と長編ですが、この時間がテーマに必要なものであることは観ているうちにわかってきます。
淡々とした日常での漠然とした空虚なもの。
『都会のアリス』も『まわり道』も面白かったですが、本作への習作に思えてしまうほどの傑作ですね。
たむ

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