キャッチ30

さすらい 4K レストア版のキャッチ30のレビュー・感想・評価

さすらい 4K レストア版(1976年製作の映画)
3.9
 ロードムービーに即興撮影は付き物だ。決まったシナリオは無く、実際に旅をしながら撮影する手法だ。『雨の中の女』や『イージー・ライダー』がこれに該当する。ヴィム・ヴェンダースの『さすらい』もそうだ。

 ブルーノは古いキャンピングカーに乗って、西ドイツ中の小さな街の映画館を巡回し、映写機の修理をしたり、フィルムを運ぶ仕事をしている。そんな彼の前に猛スピードの車で河に突っ込んだ男ローベルトが現れる。ローベルトは妻と離婚し、手荷物は空のトランクだけだ。奇妙な出会い方をした2人は共に旅をすることになる。

 ブルーノは現在を生きているが、ローベルトは過去に生きている。ローベルトは別れた妻に電話するが意気地が無いのか自分から切ってしまう。また、父親とも確執がある。彼等は旅をしながら、妻に自殺された男や映画館の窓口で働いているシングルマザーと出会っていく。やがて、2人はそれぞれの過去に向き合う為、ローベルトの父の家、ブルーノの母の家へと向かっていく。

 ヴェンダースは2人の男の旅路を乾いたタッチで撮る。西ドイツの風景や町並みだけでなく、鉱山の跡地、古い別荘、国境沿いにある米軍の監視所といった廃墟が眼に焼き付く。公民館で影絵を見せる場面はユニークだし、サイドカーで疾走する姿は解放感がある。