blacknessfall

パリ、テキサス 2K レストア版のblacknessfallのレビュー・感想・評価

2.9
所謂シネフィルと定義されがちな映画好きが観てるような作品も観てることは観てる。
でも、そういう映画は特に語りたいことがない場合が多いんでレビューしないことが多い。本作はめずらしく強く言いたいというより断言したいことがある。それは何か?後ほど明らかにする。

ある日ウォルド(ディーン・ストックウェル)は失踪した兄トラヴィス(ハリー・ディーン・スタントン)が保護されたと連絡を受ける。
トラヴィスは記憶を失っていた。ウォルド夫妻が育てていた息子ハンターと過ごすうち徐々に記憶が復活してくる。
自分の元を離れた妻を捜しにある土地を目指しトラヴィスはハンター連れ旅に出る。妻は見つかるのか?そしてトラヴィスの過去に何があったのか?

旅と共に人生を振り返る系のロードムービー。
話の興味はトラヴィスの過去なんだけど、旅に出るまでがけっこう長い。こういうのって興味をお預けされてるから単にダルいだけなことがあるけど、ヴィム・ヴェンダースは天才だからウォルドとトラヴィスの想いの交差。ハンターとトラヴィスの心の距離等を繊細な演出で情緒が際立つ。訳あり家族映画としてこのパートもとてもお味わい深い。特に子供との距離を縮めようと四苦八苦するトラヴィスが健気でホッコリしみじみさせるんだよ。
そして、兄弟の互いに遠慮しあいながら気を遣い合うぎこちない雰囲気。失踪の理由を明かさない兄に対する苛立ちから口論になる時の何ともやるせない空気感。ハリー・ディーン・スタントンとディーン・ストックウェルの葛藤や哀愁を伝える精緻な演技が素晴らしい。

見終わった今となってはここがピークだったと言える。
旅に出てからというか旅の結末、じゃなくて、トラヴィスの明かされた過去の行状が酷すぎてドン引きした。
トラヴィスはラッキーで若くてきれいな女性と結ばれたが己の未熟さと自信の無さから妻を束縛、DV、モラハラ三昧で関係をぶっ壊したしょうもない男だった。それを妻に懺悔し子供と引き合わせ許されない罪を犯した自分は身を引いて贖罪の旅は終る。倫理的に真っ当なんだけど、なんか妻の方も離れてからずっとトラヴィスを想ってたとか言ってトラヴィスを引き留めるんだよな。DV野郎に甘美な世界で腹が立った。
記憶喪失で保護されてからずっとか弱くいたいげに描いてるし。世のクズ野郎が自己投影してうんざりしてクズの支配から逃れた元カノや妻を追いかけにいきそうでモヤったな。

しかし、先述した強く言いたいのはここではない。
本作を鑑賞したのは初めてなんだけど、実は以前に途中、それも頭の10分ぐらいで観るの止めている。当時どうしても受け入れらなかったんだよ。保護された時のトラヴィスのスーツにベースキャップというコーデが!
昔からさほどファッションに興味はなくて、よくある、女性がこういうファッションをしてたら褪める的なもんとか皆無なんだけど、男のファッションにはその時々でこれは許せん、ダサくて観てられんてのがある。初見時はこのスーツにベースボールキャップがまさにそれだったんだよ。今も当時ほど拒絶感はないが嫌悪感が増したな、トラヴィスのせいで。スーツでベースボールキャップ被る男なんでみんな有害なクソ野郎なんだよ!ドナルド・トランプも自分のスローガンのベースボールキャップにスーツだったし間違いねぇーぜ😬💨
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