とむ

アステロイド・シティのとむのレビュー・感想・評価

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)
3.5
今年中にもう一本新作の公開を予定してる(しかも原作が「チャーリーとチョコレート工場」のロアルド・ダール)ウェス・アンダーソンの新作。
多分、そちらは来年以降になる気がしますが。


本作は「アステロイド・シティ」という人口100人以下の、ダイナーとコテージ、ガソリンスタンド以外の経済がない小さな集落を舞台にしたSFコメディ…というテイの演劇作品。

この要素は予告編等では公開されてない(筈)で、前作の「フレンチ・ディスパッチ」でも感じたけど、
「グランド・ブダペスト・ホテル」が彼のフィルモグラフィーの中でもクオリティ・作家性・エンタメ性・音楽その他諸々の要素が完成され切ってもはや隙がなくなってしまっていて、
そこに可愛げとして隙を見せるために"映画で映像以外の媒体を表現する"っていう要素を新たな命題として取り入れつつあるのかもと思いました。


作品についてですが、
今回舞台が一つしかなくなったことで意外や意外。むしろストーリーがわかりにくくなっているように感じました。

というのも、ウェスアンダーソンの作品ってキャストも舞台装置として組み込まれているので、お芝居の癖みたいなものが平均化されてしまっているので、場合によっては観るのが難しかったりするんですよね。

ある程度シチュエーションが分かれている事で「ここで登場するってことはこの人たちだな」と言う、ある種記号化してくれることによるわかりやすさっていうのがなくなってしまっているように感じました。

しかも劇中劇っていう構成にしているもんだからもはやめちゃくちゃ!(良い意味で)


ただ、実はテーマとしては明快で、
途中十歳な少年たちのうちの一人が「なぜ無謀なことばかりするのだ」という問いに対して話す
「それをしないと、宇宙で自分一人ただになってしまう」という、要するに孤独な人たちを描いているんだろうなと思いました。


個人的には前作のフレンチ・ディスパッチの方が好きでしたが、ウェスくんの映画って「ここが良かった」「あそこが好き」っていうそれぞれの感想を見聞きするのが楽しかったりもするので、実はまだまだ楽しみ切れてないと思ってます。
トニカクカワイイ
とむ

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