ゆかちん

アステロイド・シティのゆかちんのレビュー・感想・評価

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)
3.2
映像はめっちゃ素敵で相変わらず完璧!
カラフルでオシャレな色彩、建物や備品の数々の可愛さ。
一場面一場面が全てポストカードになるくらい絵的な美しさ。
水平垂直な独特のカメラワーク。
かと思えば、そんな画面の後ろでひょこっと顔を出す可愛いおかしみ。

また、出てくる俳優陣が豪華すぎる上に他の作品では見れないような演技をみせる。

…という満足さは十分やってんけど、
今作は、ウェス・アンダーソン監督の見せ方が極まって難解になってしまった感…笑。

いつもは多重構造でも本筋がわかりやすかったりするので、あくまで「ここは枠内である」と理解しやすさはあったんやけど、
今作は並列になっているというか、同時に重なりがあるというのか…なんというか、少し筋の集中がバラけた印象。
後で振り返りながら考えるとなるほど、てなるけど、中々ハードル高い気がする笑。

今作は「今観てる私たちはどこにいるのか?」がわかりにくいというややこしさがあったのかな。
映画館出た後はしばらく整理するのに混乱した笑。

落ち着いて考えると、
①スタンダードサイズのモノクロ画面:テレビ司会者(ブライアン・クランストン)が著名な劇作家コンラッド・アープ(エドワード・ノートン)の戯曲を紹介と、その舞台裏
②カラーのスコープサイズ:劇中劇『アステロイド・シティ』


②がメインで進むんやけど、①の舞台裏がインサートされる。
ここの切替の仕方が「今どこにいるの?状態」になりやすいのかも。あと、もう少し説明してもよかったのか。。


★満足度の高いセンス

シンメトリーな平面的構図。
ポップな色彩感覚。
縦横の垂直な移動撮影。
リアリズムや身体性が漂白された演技。
この辺はウェスならではで、とても楽しめた。

とてもややこしいし、奇想天外かつシュールなんだけど、
核実験やテレビの時代が到来、宇宙開発と1950年のアメリカの歴史や問題とかを内包していていたりする、隠れた奥行きを感じるところも良かった。


★印象に残るセリフや場面

挑戦し続ける男の子が何故無茶な挑戦をやろうとするのかとか。

あと、特に良いうえに、ここのためにこの作品があったのかなとさえ思えたのは、劇中劇のアステロイド・シティで主役オーギー(ジェイソン・シュワルツマン)が、オーギーを演じているうちに何故オーギーが火傷したのかわからなくなったといって離脱し、休憩にタバコを吸っていたときに、出番のなかった彼の妻役の女優(マーゴット・ロビー)と鉢合わせするシーン。

2人がバルコニー的なところで向かい合って会話するシーンは、劇中劇アステロイドシティでオーギーとミッジが窓越しに向かい合うのと対比してて良かった。
そして、その内容が美しくて。
カットされたシーンを2人で再現するのだけど、それは、夢に出てきた亡くなった妻と会話し、最後、妻はあなたは現実で前を向いて進まなければならないと諭すというもの。その最後、カメラマンであるオーギーがカメラを構えて、(亡くなって夢に出てきた)私を撮れる?という流れの最後、当たり前だ、と言うところがとてもグッときた。


★ 「起きたいなら眠れ」

今作は、「喪失からの前進」を引き出してる「虚構の必要性」がテーマなのかな。

最初、オーギーは妻を亡くし喪失感を抱いていた。そのとき、「時間は解決してくれない。せいぜい絆創膏程度だ」と言っていた。

そして最後、オーギーは亡き妻との夢で会話することを経て、少し前へ進む雰囲気に。ミッジとのことも少し期待できるように。

現実で身動きとれないくらいなら、眠って、虚をみて、そこから目覚めて脱却すればいいていう意味もあるのかなぁ。

これが、劇の舞台裏で俳優たちが口にする、「起きたいなら眠れ」の意味の一つなのかなぁと。

劇の舞台裏で俳優たちが言うてたのは、演技に入り込むなら自分をなくしてみたいな演技法のことなのかな〜とかも思うけど、きっと、ここは、こういう「虚構の世界の必要性」を言うてるのかなと。

「起きたいなら眠れ」の”眠れ”とは、映画やドラマの物語という虚構を意味していて。
「現実社会を生きる=起きる」を意味する。

つまり、現実社会を生きるには、フィクションの世界も必要だということを、この映画自体の構造を使ったメッセージなのかなと。

これは、映画見てる人へのメッセージとしては、現実に生きてると悲しいことも疲れることもある。
そういうとき、現実逃避に映画みて、虚構の世界を楽しんで、そこでエネルギーを得て、現実に目覚めて、「さ、がんばろ」とか、「前に進もう」みたいな。

だから、映画のラスト、エンドロールの音楽の最後がwake upという囁きだったのかなと。

また、作り手側も、自分の現実ではできないものを虚構の世界で成りきったり表現したりすることで、現実ではなかなかできない自分の持つメッセージを表したり、現実の自分とのバランスをとったり、と。


現実ではできないもの…と言う意味では、
劇作家のコンラッドはオーギー役を演じたジョーンズ・ホールとの秘めた恋愛を、劇の中では女性ミッジとの関係に置き換えているんだろうな、と。
1950年代における同性愛者は、絶対認められてなかったみたいやし。

さらに、コンラッドは自動車事故で亡くなったとサラッと語られる。
ここにも愛の喪失が描かれる。

ただ、劇中のオギーの息子ウッドロウとミッジの娘ダイナとの恋は成就するので、未来に向けた前向きな愛の余韻を残しているのは良かったなぁと。


ウェス作品て、主人公が大きな喪失をしている中、ぶっ飛びな旅を経ることで、少しずつ前を向いていく話が多い気がする。
今作もそれなんだろうな。


★役者陣

ジェイソン・シュワルツマンをはじめ、スカーレット・ヨハンソン、トム・ハンクス、ジェフリー・ライト、ティルダ・スウィントン、エドワード・ノートン、エイドリアン・ブロディ、スティーヴ・カレル、リーヴ・シュレイバー、マヤ・ホーク、ルパート・フレンド、マット・ディロン、ウィレム・デフォー、ジェフ・ゴールドブラム、マーゴット・ロビー…
主役級や有名作品に出ていた俳優陣がちょこちょこ出てくる贅沢さ!


見終わった後、ジェフ・ゴールドブラムどこに出てたんやろ?て思って後で調べたら、え、あの宇宙人w
ジェフ・ゴールドブラムにこんなんさせるのウェスだけやろw

MCUスパイダーマンのフラッシュ役のトニー・レヴォロリ、グランドブダペストホテル以降出てたし、今作も引き続き出てて良かった!😄

オーウェン・ウィルソンがいなくて寂しかったけど…。。


あ、ミッジ役のスカヨハが「マラーの死」みたいなポーズ取っててオオってなった笑。
スカヨハやっぱ美人。
スカヨハの撮り方も美しくて良かった。

美しいといえば、あのバルコニーのマーゴット・ロビーも息を呑む美しさで撮ってたな。。写真だけで終わるかと思えば、ここぞとばかりの出演。

マヤ・ホークも可愛かった!

トム・ハンクス、不機嫌じいさんながらも、孫娘たちに翻弄されるのとか人間味あって可愛かった。

魔女たち可愛すぎ!

ウッドロウ役の子も良かったな〜。
彼もこれから出てくるのだろうか。

ウィレム・デフォー、エドワード・ノートン、エイドリアン・ブロディの3人が並ぶのは迫力があったな笑

やっぱノートン好きやわー。。

エイドリアン・ブロディ、あんなマッチョやたけ笑。やっぱセクシー!

ティルダ・スウィントン、なんか若く見えたなぁ。真面目な研究員もいいね!やっぱ超越した存在で可愛かった!

ジェフリー・ライト、声良すぎ笑

スティーブ・カレル、久々にコメディ雰囲気まとった演技を見た。こないだシリアスなドラマでみたから、、、。

そして、カウボーイの中で歌上手いなと思ってたら、フレンチディスパッチで主題歌歌ってたパルプのジャーヴィス・コッカーやん笑。


アニメーションの宇宙人がカメラ向けられてポーズとるのが不意に良かった!笑。


ウェス常連組、増えてきてるな〜笑。
まだまだ彼の世界を見てみたい。
ゆかちん

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