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アステロイド・シティのYLxxのレビュー・感想・評価

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)
3.5
オマージュ(引用)/メタファー(比喩)を用いて語る映画(フィクション)を曝け出し、ファッションウェスファンをブチ殺す。

初めに、200円で町山さんの評論聞くかものすごく悩みます。(結局聞いていない)つまりはそんな映画です。英語力が堪能で無ければ映画そのものを見ながら楽しむことは難しい。しかしガチウェスオタクならばかなり楽しめる作品なのは間違いない。

映画の初めにこれは戯曲から作られたドラマであり現代社会を風刺比喩したものである。と完全にメタファーで出来た作り物なんだ!と宣言されてから始まる。これは前作でも似たような作りだったのだが今回はかなりややこしい。

劇内→劇内番組→作中劇という構造
作中劇ではキャラが多く出現するのだが、劇内キャラにはキャラクターが殆ど無く、作中劇のキャラクターのみで展開する為見ている観客は作中劇のキャラに感情移入するのだがそれは演技でありメタファーが作り出したフィクションという事実にジレンマを抱えることになる。更には今作の象徴的キャラのスカヨハに限っては作中劇内でも役者であるという3、4重?構造になっており頭が混乱する。

アザによって見る側が想起する物事とは、フィクションが作り出すメタファーであり現実とは全くもって別の世界である事を語る象徴になり。加えてハリウッドの頂点に君臨する亡き妻役のマーゴットロビーが、出番を全カットされたのにも関わらず御涙頂戴物語を悪魔で役者の台詞として語ることで更にフィクションの構造自体を開示する。

メタファーを理解し楽しむことはオタクにとって生きがいのような物であり、何ならこの映画においてもメインに某名作を想起せざるを得えない。そして数えたらキリがないほどの過去作品へのオマージュによるメタファーが登場する。しかしこの多量な引用から作り出された作中劇を難しく理解しようとするのではなく、シンプルに私の創作物(他作品)を楽しんで見てくれというメッセージのように感じた。
つまり「眠らなければ目覚められない」とは夢に生きろというメッセージなのではなかろうか。

ウェスがこの作品以降もコメディ映画を撮り続けることで後年今作は高い評価を得ることになるのではなかろうか。