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アステロイド・シティのmat9215のレビュー・感想・評価

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)
3.5
劇中劇を作る人々—劇作家、演出家、俳優たち—がモノクロの世界で沈潜する一方で、ポップなウェス・アンダーソン・カラーの人造的な劇中劇で俳優たちがドラマを生きる。唐突に立ち上がるキノコ雲や逃走車とパトカーの銃撃チェイスや宇宙人登場は人造的な世界のアクセントだ。この入れ子構造の映画でもっとも感動的な場面は、ジェイソン・シュワルツマンと、出演シーンをカットされた妻役の女優との会話だ。妻役の女優は路地を隔てた別の劇場で別の役の衣装をまとっていて、左側のシュワルツマンと右側の女優が見事にシンメトリカルな構図に収まる。過去作品を含めて、アンダーソンのシンメトリカルな構図がいちばん効果を発揮している場面だろう。あと、小屋を隔ててシュワルツマンとスカヨハが会話する場面は真正面の切り返しが、これまた最高にキマっている。スカヨハ、よき。あと、トム・ハンクスは、ビル・マーレイ枠だね。
演劇には苦手意識があるけど、演劇を扱った映画は気になるものが多い。ヒッチコック『舞台恐怖症』、リヴェット『OUT1』に『彼女たちの舞台』、そしてロジェ『フィフィ・マルタンガル』などなど。
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