一夏

アステロイド・シティの一夏のネタバレレビュー・内容・結末

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

ウェスアンダーソン作品を初めて観ましたが、ド真ん中タイプで死にました。
私(みたいな人たち)のために作ってくれてありがとう、まである。直接脳に話しかけられてるみたいだった。
現実世界でどことなくはぐれ者だと感じている、現実が求める足並みに歩幅を揃えられない人にとって、とてつもなく優しい作品。
優しく温かい夢の中で揺られる104分でした。



目覚めたいなら眠れ。

眠ると人は夢を見る。眠りと死は違う。
ここでいう眠るとは、現実から離れたもの、創作物一般(イマジネーション)のことを言うているんだろうな、という。
宇宙人は創作者、宇宙人が置いていったものは創作物から得る種のようなパワーだろうか。


映画自体、演劇世界とリアル世界線2軸で進んでいく。
でもこの2つは切り離されたものじゃない。(ということも言いたいのだろうな、というのは、途中でテレビ司会の狂言回しが2軸を行き来する、粋でラブリーな計らいで証明されていると思う)
劇作家の現実で起こったことが作品として昇華されていたり、
はたまたこの映画自体が観た人に影響を与えたり。

昨今、創作の世界は暗くなったと絶望感があった。現実が辛すぎるからです。若い監督が、映画なんて夢物語を作ったってこんな最悪な世の中を変えられないのであれば意味がない、と引退してしまったのに想いを馳せる。
この映画って、そういうことを感じている創作を愛する全ての人に対するアンサーだったと思います。


生きる意味がわからなくなったら、眠れば良い。
傷を負って、その痛みと悲しみとを抱えながらも、夢を見たら良い。

あー、ありがとうございました。
画面もとってもキュートで遊び心のある演出。劇が大好きなので最高でした。
一夏

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