たくみ

アステロイド・シティのたくみのレビュー・感想・評価

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)
3.6
【目覚めたいなら眠れ】
勇気を踏み出す事についての映画。
子どもたちは臆する事なく色々チャレンジするからこそ大発明ができる。
授業を受けていた子どもたちも授業の内容そっちのけで宇宙人との出会いからインスピレーションを受けて思い思いのモノを創り出している。
大人になると色々頭で考えてしまって足踏みしてしまう事があるけれど、子供たちは臆する事がない。その躍動感の美しさが描かれていたと感じました。

一方、大人が行動できない事を否定しているわけでもないと思います。
大人は色々な経験をしているからこそ決断できない瞬間もあるのだと思います。
責任も伴うので、子供たちを守るためには、相手を傷つけないためにはどうすべきか、などをまずは考えてしまうものだと思います。
だからこそ主人公のオーギーは「愛する人を失ったのに別の恋を始めても良いのだろうか?」と悩み、「子どもを最優先に行動できていないのに自分が幸せになっても良いのだろうか?」とミッジは悩む。
この2人は演劇の稽古というフィルターを通しているので、その時々の発言が役の声なのか自分の声なのかもわからない。

さらに後半では劇中劇から抜け出し、舞台裏で色々な人に話を聞くようになるのでもっとややこしくなる。
ここで降板した女優との素の状態での会話になり、初めて物語の根幹にあたる想いが提示されたように感じました。
「一歩踏み出してみれば良いんじゃない?そうする事が子どもたちにとっても必要なことなのよ。」的な事だったかと思います。(大事な所なのにあやふやですみません)
その言葉を聞いて迷いが晴れ、無事舞台は幕を閉じる(=映画も幕を閉じる)、みたいな構成でした。

ややこしいですけど、観るたびに新たな発見があって面白そうだなと思いました。
きっとこの感想をまとめて後に観る2回目は見え方も変わってくるのだと思います。

ウェス監督作品はわからない事が多いのですが、わからないで終わらせたくないといつも思います。
色々考えて自分なりの考えをある程度見つけたらやっとウェスアンダーソンを楽しめたと言えるのかなと思っています。

目覚めたいなら眠りなさいと監督からも言われているので夜更かしせずに今日は寝たいと思います。
(いつもより夜更かししているので明日きっとしんどい)


【その他メモ・独り言】
・作中で行われている演技の練習はメソッド演技というもの。
 メソッド演技:自分の役柄について徹底的にリサーチし、その役柄の思考などを叩き込む。
・スカジョはおそらくマリリンモンローとして描かれている。
・時系列を色で表現しているのでわかりやすい。
・舞台裏の方がメッセージ性のある事を劇的に描いている。
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