初ウェス・アンダーソンだったが、好みのテイストで面白かった。
映像面の特徴であるパステルカラー、レトロ感、シンメトリーなアングルなどなどが総じて「ウェス・アンダーソンっぽい雰囲気」と呼ばれているそうで、他の作品を観たことのないウェス初心者にもその「っぽさ」はすぐにわかる。
ストーリーも個性的で作家性が強いらしく、本作もひねりのある設定になっている。舞台となる1955年のアメリカ南西部、砂漠の町アステロイド・シティに突然エイリアンが来訪し、町は大騒動になるーーのだけれどこれは「劇中劇」で、その劇が劇作家らによってつくられる過程を紹介するテレビ番組も同時に描かれるという展開。鑑賞者はこの二つの "入れ子構造" をメタ視線で観ることになる。
アステロイド・シティでの劇が鮮やかなポップ調カラーなのに対してテレビ番組とその裏側はモノクロで描かれるので、二つの区別はわかりやすくはある。しかし、そのどちらでも登場人物達の言動がどこか普通ではなく一見、ワケワカメに思えるセリフ、シーンが頻発する。映画の進行に幕とシーンの表記が出るという演劇の体を成しており、まるで大掛かりな凝った新劇を観ている気分になった。
終盤、演者達がバックステージで "You can't wake up if you don't fall asleep" と連呼するシーンが出てきて、おそらくはこれが何かしらキーワードなんだろうなと察せられる。まあ、正直なところその意味するところはピンとこないのだけど、にもかかわらず観終わった後、妙に不思議な満足感があった。ブルース・リー曰く"Don't Think. Feel!" なのだろう。
ともあれ「ウェスっぽさ」には見事ハマったので、長らくクリップしたままの「グランド・ブダペスト・ホテル」「犬ケ島」も観てみようと思う。