グランドブダペストホテルでは過去の回想と現在の行き来のみで、ストーリーも理解しやすいが、
今作は現実の劇の稽古場と劇中から、劇の中の世界までを行き来するので、どこからが架空でどこからが現実かしっかり見ていてもラインがつけにくい。
というより、もういっそ区切らずに一連の流れの心地よさに身を任せて見た方が正解だったのかもしれない。
均一な速度で回る巨大な4つのアンテナ、毎回同じ順番で聞かれるジュースの種類、3つ子の少女たちの瓜3つな顔。
画面構成、素材、彩度、セリフのテンポまで全てグラフィカルで整っている世界。
その完璧さこそが非現実的な世界観を生み出している理由だと改めて感心した。