バランシーン

アステロイド・シティのバランシーンのレビュー・感想・評価

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)
3.7
ウェス・アンダーソン好きですよ。ちょっと恥ずかしいけど(笑)
でも、ここ何作かで芸風が完全に確立してきましたね。本作も賛否あるようですが、基本的にはウェス・アンダーソンの流儀に則った作品と見えたので、僕的には楽しめました。すごい名作、とは言えないとは思うけど。

基本、ウェス・アンダーソンの作品って「喪失」→「恢復」に向かうシンプルな構造で、本作でもそれは保たれてると思うんですよね。すごく身も蓋もなく言うと、多分アステロイド・シティでのドタバタ劇にあまり意味はなくて終盤に畳み掛けてくる、
物語の意味(人生の意味)、「人生の心地よい眠りの誘い」とそれに抗う術、の問いかけに要点があった気がして。で、その帰結としての「目覚めたいなら眠れ」なのかな、と。

オーギーとシューベルトの終盤の会話
「芝居(人生)がわからない」
「いいんだ。物語を進めろ」から、
唐突ながらも極めて意味ありげに死んだ妻役の女性とカットされたセリフを巡って会話するシーンに繋がるところなど、まさに人生における喪失と恢復の暗示でとてもグッとくるなと。ちょっと奇をてらっているように見える本作もこの辺がウェス・アンダーソン印と見える所以です。

伝わる人に伝われ!と思うのですが、90年代初頭の第三舞台みたいな読後感ですね。その場限りのドタバタとギャグで繋ぎつつ、最後に唐突にシリアスなメッセージの畳み掛けで無理やりエモーショナルな気持ちにされる的な(笑)
嫌いじゃないんだなぁ。
もちろんアステロイド・シティのドタバタ劇だけで完結してても、面白かったとは思いますけどね。マーズ・アタック以来の衝撃的な宇宙人襲来シーンと(笑)突然の北条時行ぶっ込みは必見です。
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