ミニシアター系のような緩いスローライフな雰囲気と、テレビ番組内の架空の話と実際の作り手・演者のやり取りが交差する複雑な設定・構図が共に押し寄せるので、まじまじと観ると訳が分からなくなるし難しさも感じる。ウェス・アンダーソン監督らしい話の軸が分かりづらい作品なので好みははっきり分かれそうだけど、個人的にはかなり良かった。ウェス・アンダーソン作品の中でもトップクラスに作り込まれた綺麗なセットと映像は終始見入ってしまうし、綺麗な風景に閉じ込められた登場人物たちの短い共同生活が、緊迫感のある状況でもゆったりと「なんか良いなあ」と思える描かれ方をしていた。何より緩くてマニアックな内容に対してキャストが豪華すぎる。マーゴット・ロビーの使い方が贅沢過ぎてびっくりした。所々での小ボケ要素も良かったし、唐突に宇宙人登場のシーンは爆笑してしまった。所々でドキュメンタリー的に描かれるキャスティング秘話や演者の苦悩・背景であったり、おとぎ話のようなセットとは対照的に核実験が行われている50年代の空気感がリアルに描かれているのも作中重要な要素ではあると思うんだけど、あえて何も考えずに劇中劇の世界観を楽しむことをおすすめしたい。素晴らしい雰囲気で満たされた。
