こざら

アステロイド・シティのこざらのレビュー・感想・評価

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)
4.0
初めてのウェス・アンダーソン監督作品でしたが、ただ絵が美しいだけではない、彼なりのメッセージにとても惹き込まれました。

本作は、舞台、舞台の舞台裏、舞台を紹介するTV番組…という多重構成の全編劇中劇であり、それを視聴する我々は舞台パートを観る上で、擬似的なメタ視点が与えられます。そのため、演技やセット等に対する着眼点が増え、とても面白かったですし、今までにない映画体験でした。

舞台っぽく見える平面的な映像が多用されている一方で、絶対に舞台ではあり得ないカメラワークも多いため、その不思議なバランスが本編全体に独特のコメディテイストを持たせています。個人的には、フレームインフレームの視線誘導が特に気持ち良かったです。

多重構成にすることで生まれる(疑似)メタ視点により、一見脈絡のない物語にもしっかりとした意味を持たせています。本作で描かれる「喪失と回復」のメッセージは、とてもシンプルだからこそ、強く私の心に届きました。

物事に行き詰まった時や気持ちを楽にしたい時に、私の精神安定剤になってくれるであろう作品を見つけられたような気がします。
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