KANA

東京画 2K レストア版のKANAのレビュー・感想・評価

東京画 2K レストア版(1985年製作の映画)
3.6

ヴェンダースが小津安二郎へのオマージュを込め、東京の様々な風景を切り取ったドキュメンタリー。

1983年4月に来日した際撮ったものだそう。
6割はパーソナルなVlogという印象で、全く高尚なものは感じない。

人々が忙しなく行き交い、広告も賑やかな駅構内
サラリーマンたちの花見
原宿の竹の子族
ゴルフの打ちっぱなし
食品サンプル工場
パチンコ

そこにはもう"小津の東京"はない。
俗にまみれたTokyo。
でもそれらは紛れもなく80年代日本のポップカルチャーの断片なわけで。
そう気持ちを切り替えた?ヴェンダースの雑多なこの街への関心の高さがものすごく感じられる。
特に食品サンプル作りの工程やパチンコには(閉店後の釘師の作業にも密着して)尺を割いていたw
竹の子族ってこんなにじっくり見たの初めて。ファッションといい練習熱心さといいすごい現象。あのぶっ飛びまくりな若者たち、今は落ち着いてるかな?

あと4割は笠智衆と小津組カメラマン厚田雄春へのインタビューでググッと小津調に迫る内容。
細部に至るまで自分色に染め上げないと気が済まない監督の徹底主義や、毎度ゴザを敷いて世界一低い三脚を使っての神経を使う撮影、監督への畏敬の念と深い感謝…
これはとても貴重なインタビューで感慨深かったし勉強になった。
小津作品をたくさん鑑賞するにつれて繰り返し観たくなるものだと思う。

オープニングとエンディングは『東京物語』の一部がごっそりそのまま使われていてヴェンダースの小津愛がこれでもかと伝わってくる。

全くもってとりとめないものの、"変わってしまった東京"からさらに40年経った今となっては十分な昭和ノスタルジーとして映るので、それはそれで楽しめた。
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