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硫黄島からの手紙のYYamadaのレビュー・感想・評価

硫黄島からの手紙(2006年製作の映画)
3.7
【戦争映画のススメ】
【コラボ鑑賞のススメ】
❶父親たちの星条旗 (2006)
❷硫黄島からの手紙 (2006)

◆本作で描かれる戦地
1945年 太平洋戦争最大の激戦
「硫黄島の戦い」/ 日本 (実話)
◆本作のポジショニング
 人間ドラマ □■□□□ アクション

〈本作の粗筋〉 allcinemaより抜粋
・戦況が悪化の一途をたどる1944年6月、日本軍の最重要拠点である硫黄島に新たな指揮官、栗林忠道中将が降り立つ。アメリカ留学の経験を持つ栗林は、無意味な精神論が幅を利かせていた軍の体質を改め、合理的な体制を整えていく。上官の理不尽な体罰に苦しめられ絶望を感じていた西郷も、栗林の登場にかすかな希望を抱き始める。
・栗林の進歩的な言動に古参将校たちが反発を強める一方、ロサンゼルス五輪・馬術競技金メダリストの西中佐のような理解者も増えていった。そんな中、圧倒的な戦力のアメリカ軍を迎え撃つため、栗林は島中を張り巡らせた地下要塞の構築を進めていく…。

〈見処〉
①世界が忘れてはいけない島がある。
日本から見た「硫黄島」——
・『硫黄島からの手紙』は、2006年に製作された戦争映画。製作はクリント・イーストウッドとスティーヴン・スピルバーグ。
・本作は『ミリオンダラー・ベイビー』の巨匠クリント・イーストウッド監督が、太平洋戦争最大の戦闘とされる硫黄島の戦いを日米双方の視点から描いた「硫黄島プロジェクト」2部作の第2弾。日本側の視点による作品。
・本作は、アメリカ留学の経験を持つ親米派でありながら、アメリカを最も苦しめた指揮官として知られる栗林忠道中将が家族に宛てた手紙をまとめた「玉砕総指揮官の絵手紙」をもとに、本土防衛最後の砦として、死を覚悟しながらも一日でも長く島を守るために戦い続けた男たちの悲壮な最期を描いている。
・主演の栗林中将に渡辺謙。その他、二宮和也、伊原剛志、加瀬亮、中村獅童がそれぞれ日本軍兵士として出演。
・本作は、姉妹作品の『父親たちの星条旗』よりも高い評価を受け、第79回アカデミー賞では作品賞・監督賞・脚本賞・音響編集賞にノミネートされ、音響編集賞を受賞。全編日本語の映画が外国語映画賞ではなく作品賞にノミネートされるのは初めてのことで、外国語映画としては当時で7本目であった。

②硫黄島の戦い
・硫黄島は、東京の南約1,080km、小笠原諸島の小笠原村に属する火山島。面積は、わずか21km²程度、島の大部分が硫黄の蓄積物で覆われ、飲料水は雨水に頼るしかない不毛の孤島。
・しかしながら、太平洋戦争で日本本土を目指していたアメリカ軍は、グアム・サイパンらマリアナ諸島と東京の中間に位置する硫黄島を「B-29爆撃機の緊急着陸場所」とするための重要侵攻先に決定。
・日本としても、当時から東京都の一部であった硫黄島陥落は、最初の日本本土占領を受けることを意味する、絶対に失ってはならない要地で。
・アメリカ軍は「デタッチメント作戦(分断作戦)」と名付けられた硫黄島侵攻は、1945年2月19日に開始。
・日本軍の栗林忠道中将による「硫黄島の地形を生かした水際配置・水際撃滅」と「日本の悪しきバンザイ突撃戦術の回避」により、アメリカ軍に士気喪失させるほどの長期持久戦を行った結果、日本軍は守備兵力20,933名の95%にあたる19,900名が戦死・戦闘中の行方不明となるほぼ全滅に追いやられた。
・一方のアメリカ軍も戦死6,821名・戦傷21,865名の計28,686名の損害を受け、アメリカ軍攻略部隊の損害者数が日本軍を上回った稀有な戦いとなった。
・3月26日、栗林以下300名余りが最後の総攻撃を敢行し壊滅し、硫黄島による日米の組織的戦闘は終結した。アメリカ軍の当初の計画では硫黄島を5日で攻略する予定であったが、最終的に1ヶ月以上を要し、アメリカ軍の作戦計画を大きく狂わせることとなった「太平洋戦争最大の激戦」であった。

③結び…本作の見処は?
イーストウッドが描く「日本人の滅びの覚悟」
◎:「ここはまだ日本か?」「はい、日本であります」…最期に朽ちるまで本土に暮らす日本国民を案じて止まない栗林中将。まさにサムライの頭領を演じる渡辺謙の凛とした演技が涙を誘う。
◎: 軍人役の渡辺謙と異なり、準主演の二宮和也演じる「もとパン屋」の一兵卒は、現代の一般人と同じフィルターにて、硫黄島での地獄を見つめている。栗林中将の最期のシーンにおける二宮の迫真の演技は見逃せない。
○: 降伏している日本兵を銃殺するアメリカ兵士。自国の行為を美化せずに、本作を日本視点の作品とするクリント・イーストウッドの誠実な演出には、尊敬の念を覚える。
×: アカデミー音響編集賞受賞作品でありながら、爆撃音の大きさに比べ、日本人俳優の台詞が小さく、音量バランスが悪い。リモコン音量調整の最難関作品のため、日本語に対して字幕が欲しい。(自分が日本映画が苦手な理由は、字幕で映画鑑賞したかったからだと、気づかせてくれた作品)
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