レモネードサンドウィッチ

硫黄島からの手紙のレモネードサンドウィッチのレビュー・感想・評価

硫黄島からの手紙(2006年製作の映画)
4.0
日本人が見て不自然に思うような誇張も無く、アメリカに都合の良い解釈も無く、日本寄りの演出やここで涙を誘おうという意図も無い。
できる限りニュートラルな立ち位置で描いた姿勢にまずは敬服。日本人の視点で撮ろうとしているのが違和感なく、心に残る秀作。日本人監督・スタッフだったらこの作品は出来なかったし、イーストウッド監督ならではなのでしょう。

憲兵が一瞬の出来事で上司に最前線に送られたり、ちょっとした誤解で上官に首を斬られそうになったり。そんな戦いによるものとは関係ない些細な人生の分岐点で亡くした無数の命もあったに違いない。(主人公はあんなにぼやいていたらおそらく数十回死んでいる)
もはやこれまでと集団心理による自決。
また、どれだけの知将が現れ部下が信頼を寄せたとしても、結局犬死にとなる無念さ。
それもこれも無くさなくて良かったはずの命。

米兵の母からの、早く帰って、生きて帰ってという手紙に敵も人の子であると気づく。
しかし、日本ではそんな母からの手紙は書けるはずもなく、また硫黄島から届かなかった数多の手紙はどういう意味なのか。彼の国の観客には伝わっただろうか。