福福吉吉

硫黄島からの手紙の福福吉吉のレビュー・感想・評価

硫黄島からの手紙(2006年製作の映画)
4.0
◆あらすじ◆
1944年の硫黄島に指揮官として栗林陸軍中将(渡辺謙)が着任し、硫黄島の防衛計画に着手する。海軍士官が古い考えに固執する中、栗林は新しい方法で指揮していく。そんな最中、陸軍の兵士の西郷(二宮和也)は上官の横暴に辟易しながら、ただ家族を思い、手紙をしたためる。

◆感想◆
クリント・イーストウッド監督が硫黄島の戦いを日米それぞれの視点で描いたものであり、本作は日本視点でストーリーが展開していく。

太平洋戦争での日本の戦況悪化を背景に、陸軍兵士の西郷を中心に日本軍が硫黄島の戦いを栗林の赴任から戦いの終結までを丁寧に描いた作品となっており、命を捨てることを是とする日本軍の中で西郷が最後まで生きること、家族と再会することを望んだ姿が印象的に描かれていました。

1944年当時の硫黄島では海軍士官の派閥を力を持っており、陸軍が隅に追いやられていました。そんな中、陸軍中将の栗林が指揮官として赴任し、独自の考えで指揮をしていき、海軍士官たちの反感を買います。栗林の考え方はとても現代的で好感の持てるものでしたが、当時の日本軍の考え方からするとかなりイレギュラーなものだったと思います。

陸軍兵士の西郷は海軍士官の横暴と硫黄島の劣悪な環境に辟易しながらひたすらに残してきた妻や子供を想い、日々を過ごしていました。西郷も当時の日本からすると、イレギュラーな人物で会ったと思いますが、他の兵士たちも表に出さないまでも西郷と同じ思いを持っていたんじゃなかなと思います。

硫黄島の戦いで日本は海軍艦隊の支援も無く、戦う以前から圧倒的に劣勢だったことが描かれています。栗林は現有戦力で硫黄島の死守を考えますが、海軍と陸軍の対立があり、一枚岩になれなかった日本軍は次第に追い詰められていきます。これらの描写が非常に分かりやすく、説明的なセリフがなくても映像で理解できるようになっていて素晴らしいと思いました。

戦争が始まってからの西郷の心情がとても伝わってきて、戦いの最中、なんとか生き延びようとする姿は人間らしさを感じさせるものになっていました。戦争により全てを奪われていった西郷からすると硫黄島の戦いは無益なもののように感じられたのではないかと思います。

映像として、日本軍の姿を中心に描かれているためか、戦いが始まるとやたらと地下壕でのシーンが多くなり、アメリカ軍が地上で圧倒的な攻撃を仕掛ける中、地下から抵抗し続ける日本軍の姿が印象的でした。戦力に劣る日本が勝つためには地下に隠れて戦うしか方策がなかったのではないかと思いました。

第二次世界大戦中の日本のありのままの姿を描いているように感じてとても好感の持てる作品でした。観て良かったと思います。

鑑賞日:2023年12月19日
鑑賞方法:Amazon Prime Video
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