たかっし

ベルリン・天使の詩 4K レストア版のたかっしのレビュー・感想・評価

5.0


アメリカと日本を心の故郷とし、漂流する魂を描き続けているヴィムヴェンダース監督が、ほぼ唯一出自であるベルリンと正面から向き合い、唯一無二の美しい叙事詩を作り上げた。

ここでの主人公である天使ダミエルは他のヴェンダースの主人公、トラヴィスやリプリーや平山と同様に彷徨える魂であった。
人のこころを読み取り、時折励ますことは出来るも現実からの傍観者であった。
しかしダミエルは生とは何なのか、存在するとは何なのかを知りたくなり、サーカスのブランコ乗り(彼女もまた羽根ある天使である)マリオンに恋をすることで人間になろうとする。

「子どもが子どもだった頃…」
後にノーベル文学賞を受賞するペーターハントケの美しい詩とアンリアルカンの重厚なモノクロ映像。反してダミエルが人間になってからのカラー映像の鮮やかさ。
ブルーノガンツら見事な出演者。
とりわけ終盤のソルヴェーグドマルタン演じるマリオンの「寂しさを感じることで貴方への愛を感じる」告白は息を呑む美しさだ。

そして荒廃と戦後を引きずりつつも2年後に壁が崩壊するベルリン。
1番のこの映画の主役はこのベルリンの街と市井の人々のこころの呟きであり、ダミエルをこの街に人間として存在させることで街の記憶として残しておくことがヴェンダースの想いではなかったろうか。

大学生の時初めてVHSで見て、当時良くわからなかったけどただ感動し、今となっては出演者のほとんどは鬼籍に入ってしまったが記憶としての映画とその想いは永遠だ。
たかっし

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