矢野竜子

ベルリン・天使の詩 4K レストア版の矢野竜子のレビュー・感想・評価

4.3
恥ずかしながら初見という…。
劇場にて朝早くから見た。
前半の街と人パートが
それこそあの分厚い鈍器本
「東京の生活史」ならぬ
「ベルリンの生活史」という感じで良い。
電車に無表情で乗っている人々も
何かを考えて暮らし
心の奥には何かを抱えている。
冒頭から怒涛のセリフ量で圧倒されるも
街にはたしかに垂れ流しの
大量の心の声が流れているのだ。
そんな心の声を
文字として残し遺すこと(図書館)と
物語を語り継いでいく存在(語り部)が
本編中何度か描写され、
過去と現在、そして未来を繋ぐのだが、
映画こそがまさにそれだろう。
図書館は様々な時代を繋ぐ
狭間の空間であること同様に
映画館もまた様々な時間軸を超越する
狭間の空間なのである。
結局のところ私が映画館や図書館、
あるいはレコード店に
引き寄せられてしまうのは
それ故に他ならない(言い訳)
またヴェンダースは本作を通して
私たち観客に天使の視点と人間の視点を
行き来させるさらなる俯瞰の視点を
与えていることも忘れてはならない。
私たちも天使であり人間なのだ。
見下ろすことが常だった
天使のブルーノガンツが地上で
見上げる動作を始めるところに
無性にグッとくる。