ドナウ

夢の涯てまでも ディレクターズカット 4K レストア版のドナウのネタバレレビュー・内容・結末

-

このレビューはネタバレを含みます

この時代までの集大成、ほとんどの要素が入っているのではなかろうか。そこに記憶や新たな時代の幕開けといったテーマで、ラ・ジュテや2001年宇宙の旅を引用していたり。1999年という一つの時代の終わりから2000年という新たな時代が訪れ、世界と共にデジタルは全て消滅し再びアナログに回帰する。ベルリン・天使の詩でも感じた映画製作のメタファーというか、今作は撮影、脚本、音楽、編集の要素が盛り込まれ、フイルム→デジタルへと移行してきた映画は、絵と活字まで退行する。オーストラリアにはオアシスが有り、それまでおいかけっこしていた者たちが、世界が終わりそれまでの過去を忘れたかのように集い仲良く過ごしている。そして、ここで行われるセッションはボレロを彷彿とさせるような構成で、祈りが折り重なるように豊かに複雑になっていく。終盤のトリップパートは自分の世界に没頭し、楽しかった過去やなくしたものを眺める、まるでスマホやSNSへの依存のよう。このドープな映像が2001年宇宙の旅の形而上的なものと違い不気味で格好良く、ずーっと眺めていられる。この監督の好きなところに構図もさることながら、色使いの良さがあって、先の夢の映像や東京や中国のネオンの色彩見事さと言ったら…それまでヴェンダース作品はカラーの方がなんて思っていたけれどモノクロの良さはことの次第で気がついた。珍しく安心を描いてたと思ったら世界の終わりが近づいていることに気が付かず、事が起きたらまた不安…。そして、電子への不安への回答が積み上げたものを更地に戻し、また一から作り直すというのは旺盛だなぁ。
ドナウ

ドナウ