MidoriK

余命10年のMidoriKのネタバレレビュー・内容・結末

余命10年(2022年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

切なくて愛おしくて最後の方はずっと泣いてた。

茉莉は生き抜いたと思う。彼女が思う以上に鮮やかな思い出を皆に残して。
小松奈々の華奢な体と特徴的な目元が、自分の死を10年間共にしていく茉莉の切なさをよく描き出していました。
あんな細い彼女が更に痩せて挑んだ終盤の茉莉は凄かったです。

和人を演じる坂口健太郎は、生きることに希望が見いだせない青年から意志を持った強い男性への成長過程を見事に演じていたと思います。本当全然違いました。優しい雰囲気は変わらないけれど、口調も変えていましたね。
パンフレットを読むと、2人とも「中途半端な気持ちでできないと思った」と語っていて、その本気度が感じられました。

2人を取り巻くキャストが良くて、友達役の山田裕貴や奈緒、黒木華らの演技も良かったです。
お姉さん役は黒木華が適役でしたね!本当に良いお姉さんでした。


出会った時は、路頭に迷っていた和人をたしなめて励まして、見守っていた茉莉。
自分の死期を悟って、治らない病気だと伝えた時も、嫌だと泣き崩れる和人を抱きしめていて、自分の方が死ぬのにある意味「守っていた」ようでした。
それが最後、成長した和人が「頑張ったね」と茉莉を労っていて、今度は和人が茉莉を見守ったのが印象的でした。

茉莉のお母さんとのシーンでも「私たちが泣いちゃったから、茉莉は泣けなかったんだよね」と言われていて、ずっと彼女は甘えられなかった(むしろ甘えさせていた)けど、最後はお母さんに、和人に甘えられて良かったなと思いました。
お母さんとのシーンもとても良かったです。

藤井監督だと知らずに見ていて、鑑賞後にパンフを読んで知りましたが、思えば居酒屋のライティングなどは彼らしい色調でした。

四季折々の風景がとても綺麗で、日々の繰り返しに見えることも大切な日々なんだなと思わされます。
原作者の方が好きだった植物を部屋の中でもふんだんに取り入れていて、装飾や美術さんがとても考えて作っていることを実感しました。
衣装やヘアメイクも色々考えて設定しているようです。

茉莉ちゃん、生きていて欲しかったな。
走馬灯のように想像したあの夢のように、和人と一緒に生きていて欲しかった。
でも彼女の生きた日々は決して無駄じゃなかったです。
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